音楽出版ビジネスもインディーズが活況、ますます曖昧になるメジャーとの境目

独立系音楽出版会社の強みである「柔軟性」

独立系音楽出版会社にとって、柔軟性が彼らの最大の強みとなった。Kobaltに関していえば、契約内容を個々に合わせてカスタマイズすることを売りにしている。大手企業のように、拘束だらけの長期契約でクライアントをがんじがらめにすることには興味がない、とアードリッツ氏も言う。「私は常々、『うちが嫌なら無理にいる必要はないよ』と言ってきました。うちの顧客保持率は98%です。皆さんこう言うんですよ、『好きなようにしていいのは分かってる、でもここがいいんだ』と」。契約の40%は、在籍する作曲家の推薦による、とも付け加えた。「みなさん可能な限り信頼とサポート、安心を求めているのだと思います。彼らの普段の職場はたいてい真逆ですから」

ユベール氏も、Kobaltが管理業務契約に力を入れている点を挙げた。会社側は楽曲制作やマーケティング業務よりもロイヤリティの回収や著作権管理に専念しているため、作曲家にわたる前金の額は少ないが、その分より決定権を与えられる。「弊社はおよそ600社の小規模な音楽出版会社を束ねています――こうした企業に代わって、管理業務を中心に山のような業務をこなしています。ある意味、我々はインディーズ業界の発展と多様化を育むインキュベーターでもあるわけです」とユベール氏は言う。

Downtown Music Publishingの代表者はローリングストーン誌にこう語った。「インディーズ対メジャーの構図は、業界の考え方としては時代遅れのような感じがします。クリエイターが楽曲を自分で収録し、配信し、宣伝できるうえに、作品の権利も保有することができるような時代に、そんな構図は無意味じゃありませんか?」。同社は今週、元ワーナー・チャペルUKのマネージングディレクター、マイク・スミス氏をグローバル部門の新部長に迎えた――幹部クラスでもメジャーとインディーズの垣根がなくなりつつある。

Downtownではいわゆる“インディーズ”の作曲家がメジャーアーティストと共作するケースがどんどん増えている。Cautious Clayはジョン・レジェンドの新作に3曲提供しているし、アンソニー・ロザマンドはレディー・ガガの「シャロウ」を作曲した。ティー・ロマノはクリス・ブラウンとヤング・サグが最近の作品を手がけている。「ここで浮かぶ疑問は、そもそもインディーズの作曲家とはなんぞや?」と、代表者はローリングストーン誌に言った。「ライアン・テダーはインディーズの作曲家なのか? 彼はジョナス・ブラザーズの“サッカー”や、ビヨンセの“XO”“ヘイロー”、アデルの“Rumor Has It”など数々の大ヒット曲を書きました。たまたまDowntown Music Publishingに所属しているというだけです」

「私には、メジャー対インディーズという構図は近年よく見かける他の変化にも当てはまるように思います――Netflixのようなデジタル先行ストリーミングプラットフォーム対ケーブルTVおよび従来のTV。あるいはソーシャルメディア対従来のメディア」と、代表者は続けた。「こうしたケースでは、挑戦者が互角に戦えるほどにまで成長しています」

Translated by Akiko Kato

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