österreichが遂に本格始動、新作『四肢』全曲解説&制作を語り尽くす

Track1:swandivemori「飯田瑞規というボーカルをちゃんと使いたい気持ちが強くて」

―歌メロに対するトライは『四肢』の中にもいろいろな形で散りばめられてると思うので、1曲1曲聞かせてください。1曲目の「swandivemori」は、cinema staffの飯田くんのボーカル曲で、去年の夏頃に作った曲だそうですね。

高橋:直近でcinema staffの曲を三島と共作して、そのあとにösterreichでライブをやることになったので、その流れでベースを三島に頼んで、2曲くらい作ろうってなったんです。そのときに、cinema staffの共作と同じ手法をそのままやってみたいと思って。なので、三島もメロディに結構手を入れてて、2人で作った感じですね。



―大元は國光くんが作って、それを三島くんに投げて、お互いブラッシュアップしていったわけですよね。

高橋:あとはcinema staffと一緒にやらせてもらって、飯田瑞規というボーカルをそのまま呼ばせていただいたので、彼のボーカルをちゃんと使いたい気持ちが強くて。彼に合う曲調というか、開けた感じの曲がいいなって。cinema staffはそういう曲が上手いから、だからこそ三島に手伝ってもらったっていうのもあります。

―ある意味、「斜陽」と兄弟みたいな曲だと。あとこの曲はギターが全面に出ていて、noteには「何度目かわからないオルタナブームも再来してた」と書いてましたよね。

高橋:スマパンブームが来てました。もともと大好きで、一回ドラムが薬で抜けて、打ち込みでアルバム作ったじゃないですか? 前はあの辺りが好きだったんですけど、去年は初期のスマパンブームが来て、「ギターの音がデカいのやっぱりいいな」って、その影響はちょっとあるのかもしれない。




Track2:映画「やっぱり歌の力みたいなものがすごく好きなんだと思う」

―2曲目の「映画」は古い曲で、SoundCloudには別バージョンも上がっていますが、鎌野さんボーカルと今のバンドで仕上げた形ですね。

高橋:「映画」はもともと一人で作ってたときの曲なので、ちょっとパーソナルな感じなんです。でも、当時ポップスをやりたいと思ってたから、シンプルで、あんまりひねらずに、いいメロディといいフレーズでまとめた曲を作りたい欲があって。それを今に落とし込んだらこうなりましたっていう感じです。



―國光くんの思う「いいポップス」とは?

高橋:Mr.Childrenですね。やっぱり歌の力みたいなものがすごく好きなんだと思う。誰が聴いてもいいと思えるというか、ポップスというものの定義のひとつが普遍性じゃないですか? そこに対する憧れはめちゃめちゃあります。自分の作るものがどうしても変な感じになっちゃうのは薄々感じてて、ストレートに作ろうとしてもそこに辿り着けないから羨ましいし、ポップスメーカーというか、そうなりたいって気持ちはどこかにありますね。


Track3:きみを連れてゆく「いいメロディの真理みたいなものがあるのかなって研究して書き直しました」

―3曲目の「きみを連れてゆく」は今年に入ってから作った曲だそうですが、ポップスとしての完成度が非常に高い曲だと思います。

高橋:「きみを連れてゆく」は自分のプリミティブな洋楽への憧れみたいな、向こうのインディへの憧れみたいなものがすごく強いかなって。

―タイトルからして「I’ll Take You Everywhere」だもんね。

高橋:Penfoldもそうだし、キンセラ、アメフト、オーウェンとか、そういうものへの憧れを今に落とし込んだらこうなりましたっていう。ただ、歌はどうしても日本人だから、日本人的なメロディになってると思うんですけど。





―ボーカルはシークレットになっていましたが、あみのずの紺野メイさんなんですよね。

高橋:TwitterでPeople In The Boxの弾き語りをしてる動画をたまたま見て、僕もピープル大好きだし、いい声だなって思って。最近は曲を作るときにボーカリストに当て書きすることが多くて、紺野さんの声だったらこういう曲調がいいと思ったんです。でも、最初に渡したデモに納得がいかなくて。

それで、いろんな曲を聴いて、「これが今の日本のポップスのメロディか」と思ったり、欅坂46の平手ちゃんの「角を曲がる」って曲がすごく良くて、いわゆる「アイドルポップス」とも違うから、こういう切り口もあるんだなって思ったり……。いいメロディのフォーマットというか、真理みたいなものがあるのかなって、頑張って研究して書き直しました。

―「今の日本のポップス」っていう意味だと、ヨルシカとかYOASOBIのことってどう思いますか? 彼らはボーカロイドの出身で、國光くんもデモではボーカロイドを使っているようですが。

高橋:僕がボーカロイドを使っているのはあくまでツールとしてなんですけど、彼らのことは天才だと思いますね。ホントすごいし、いろんなもののミックスの仕方が上手い。雑多なところから拾ってきてるけど、アウトプットの仕方がすごくまとまってて、新しい世代だなって。

Edited by Aiko Iijima

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