「ミュージシャンは政治を語るな」に物申す AAAMYYY × ermhoi対談

左からAAAMYYY、ermhoi


次の世代は、社会の「分断」とどう向き合っていくべき?

―お二人がこうやって政治や社会のことを色々と調べたり考えたりしながら発言をされているのって、「表に立って扇動する表現者・アーティストとしての役目」という意識か、それとも「ひとりの国民としての行動」という意識か、どちらが強いですか?

ermhoi:私は完全に「国民として」です。私が音楽をやってるのは、感覚として、普段の生活とはちょっと離れたところに行きたいからなんですよね。異次元だったり、空とか海とかに行きたくて、音楽やってるところがあって。そういう音楽をやってる私が、なぜ生活に根差した政治の話をしたいかっていうと……本当はあんまりしたくない。でも一方で、「税金を払ってるのに正しいと思える方法では使われてないな。なんでだろう?」という疑問が常にある。それは、日々を生きる一人の人間として言いたいですよね。その上で、「この問題について考えてみませんか?」って投げかけたいところもちょっとあります。


Tempalayの最新シングル「大東京万博」のMV

AAAMYYY:同じ意見です。「音楽は音楽」って分けられたらいいですけど、私が作ってる音楽や歌詞は現実に根付いたものであることが多いので、どうしても切っても切り離せない関係になってしまう。個人を表現することが音楽につながっていくし、違和感というものを音や歌詞に落とし込むことを、私はずっとやってきているので。

ermhoi:結局、与えられることを待つのは無責任だと思うんですよね。だから無責任であった自分をやめる。頭の中で「いい暮らししたいな」「こういう人に優しい世界に住みたいな」とか理想を求めていながら、それをただ黙っていたら与えられるものと思ってるだけではダメだし、与えられないことに対して不満やクレームを言うだけというのもいい態度ではないなと思うんです。「自分はこういう世界が理想です、この問題については反対です」って発言していくことも、理想を叶える道のひとつだっていうふうに考えているんですよね。

AAAMYYY:声を上げると届くということは、コロナの給付金や保証の実現もあって「あ、実際にちゃんと届くんだな」と認識できたのではないかと思いますね。周りの人に対しても、お互いが声を上げなくてはどう考えてるのかも伝わらないし、理解も深まらないし、やはりコミュニケーションなくして意思疎通はないように、社会に対しても声を上げなくては意味がないなと思いました。


ermhoiも出演、millennium parade「Fly with me」のライブ映像

―Tempalay、Black Boboi、millennium paradeのメンバーなど、二人と世代が近い周りのミュージシャンたちは、声を上げたり、社会に対して中指立てなきゃいけないところは立てたりということを積極的にやっていて頼もしいなと思います。

ermhoi:そう言ってもらえると嬉しいです。

―一世代前よりもミュージシャンの社会的行動・発言が増えているのは、社会全体の空気や危機感が切迫していることももちろん影響してるであろう一方で、資本が大きいレコード会社や事務所に頼らずともミュージシャンたちが個の力で音楽を広く届けられるようになった時代の変化とも関係があるように思います。

AAAMYYY:あえて政治の話とかを表明しなかった人たちもいるんだとは思いますね。大きな会社になると会社の方針があったりして、言えなかったんじゃないかなって。でも、内田裕也さんとか、昔から言ってた人は超かっこいいもんね。

ermhoi:(忌野)清志郎さんとかね。

AAAMYYY:うん、今でもかっこいいなって思いますね。私の周りのミュージシャンの中にも、ホイちゃんはじめ、政治的発言をいとわない人が増えてきたなって思います。コロナよりもずいぶん前から、yahyelの(篠田)ミルくんがレジスタンス的な意思表明をしていて、彼の発言は非常に理に適ってるし面白いなと思って見ていたんですよね。そうしたらコロナをきっかけに「Save Our Space」を発起して、署名を集めて提出する、という行動を始めたことにすごく感動して。そういうアクティビスト的な活動は、私たちの世代のミュージシャンでは恐らく誰もやってないんじゃないかと思うくらい、なんかタブー化されちゃってたというか。その風潮が破られた雰囲気がありましたね。

ermhoi:ありましたね、だから嬉しいよね。

AAAMYYY:そう、嬉しかった。「Save Our Space」では文化芸術従事者に対する助成金を求めますという署名活動から始まって、実際に改善された部分があるじゃないですか。やっぱり声を上げなくては法案とか政策を変えられないし、どんな仕事をしていようと、有権者であるわたしたち国民が声を上げることが、今の政権の中では少しでも力になるのではと感じますね。誰でも声を上げられるんだよっていう状況ができたと思います。

ermhoi:今まで資本主義で上手く回ってきて、「みんな死なないように頑張って仕事をしてお金を増やして経済を回そう」みたいな感じだったのが、貧富の差がめちゃくちゃ広がってしまっているということにみんな気づいてきて。アメリカの若者たちの間では、北欧の例を見て、増税する代わりに公共サービスを手厚くした方がみんなハッピーじゃないか、という思想が広がっているんらしいんですよね。日本も若者のあいだでも、その理想を持つ人たちが今回の件で増えるんじゃないかなって思ってます。リアルに国って支えてくれないんだなということを今回目の当たりにしてしまったけど、私が期待したいのは、どちらかというとソーシャルデモクラシー寄りで。でも同時に、すでにお金がある人たちはこの先もまったく困らないだろうから、「今まで通りに行こうぜ」とはなっちゃいますよね。

AAAMYYY:中田敦彦さんのYouTube大学で、現政権ではなぜソーシャルデモクラシー的な政策がないのかわかりやすく説明しているのですが、政権が志す制作方針や構造を知れば、「こういう社会になって欲しい」という国民の意思をきちんと反映してもらうために、我々がどうしたらいいか考えられると思います。ホイちゃんの言う分断に対しても、もはや国民が手を取り合っていくしかないんじゃないかと思いますね、今は。だから声を上げやすい環境をみんなが作るとか、お隣さんをお隣さんが支える、みたいな。コロナの影響で政府の色々な部分が露呈したので、きっと、政治に興味を持つ人も増えたでしょうし。選挙行こうって思った人もたくさんいると思います。

ermhoi:でも期待はしない。前回の参議院議員選挙のときも、SNSでは芸能人が「選挙行きましょう」って投稿したり、「#投票完了」ってタグが広がったりしたけど、投票率が40%台だったから。

AAAMYYY:低かった。めちゃ絶望したね、あのとき。

タグ:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE