コロナ感染、65歳以上の高齢者に対する偏見と差別意識

Photo by Ina Fassbender/AFP/Getty Images

1959年から2014年までのアメリカの平均余命を見てみると、69.9歳から78.9歳に増加している(もっとも、2014年以降は横ばいになったのち下降傾向にある)。言い換えれば、2020年の70歳は、ほんのひと昔前の70歳よりも、心身ともにまるで別人だ。

そこへ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生した。65歳以上の人々は突如――実際の健康状態とは関係なく――「感染の危険度が高い人々」と一様にレッテルを貼られ、外出を控えて注意するよう指示された。テキサス大学オースティン校で人間発達学/家政学を教えるカレン・フィンガーマン博士によれば、このような区分が生まれたのは、COVID-19が介護施設の入居者に甚大な被害をもたらしたのが原因だという。

「たしかに介護施設での死亡率は天文学的な数字でした。ですが、統計学的に見れば、高齢者のうち介護施設で暮らしているのはわずか5%です」と、フィンガーマン博士はローリングストーン誌に語った。「確かに感染の危険は非常に高いですが、(施設の入居者は)もともと重い病気を抱えていて、弱っているんです。非常に感染しやすいのは確かですが、それと同時に、高齢者の中でもごく少数派なんです」

この点については、最近ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション誌に発表されたイタリアのCOVID-19の死者に関する記事に分かりやすく説明されている。研究結果によると、60~69歳の死亡率は3~4%――全体の死亡率よりやや高め――だったが、これが80歳以上になると一気に20%に跳ね上る。「介護施設には、死の危険に直面する極めて脆弱な人々います」とフィンガーマン博士は説明する。「ですが、これを高齢者全体にあてはめるのは、老いイコール衰弱という見方を与えてしまいます」

そうではなく、老齢学の研究者のように、暦の上の年齢と生物学上の年齢の両方から考えてみてはどうか、とフィンガーマン博士は提案する。USA Todayに最近掲載された論説記事によると、「暦の上の年齢とは、生まれてから現在までの年数を指し……生物学上の年齢とはその人の生理機能、つまりどのぐらい身体が機能しているかを表している」。COVID-19の場合、重篤化や死亡の危険性を語る際には生物学上な年齢のほうが重要だ。すべての65歳以上を年代学的にひとくくりにしてしまうと、個々の健康状態に関係なく、集団全体に偏見を生むことになる。

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Translated by Akiko Kato

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