ローリングストーン誌が選ぶ「アニメーション映画」ベスト40

4位『白雪姫』(1937)

歌うプリンセス、邪悪なクイーン、ハンサムなヒーロー、頼れる仲間たちが繰り広げるストーリーは、ケンタッキーフライドチキンにとっての「ハーブ&スパイスの秘伝のブレンド」のようにディズニー独自のフォーミュラとして定着している。だが1930年代当時、ウォルト・ディズニーはおとぎ話を題材とした長編アニメーション『白雪姫』に社運を賭けていた。そして同作はアニメーションの未来を変えた。世界中での大ヒットにより、80分にわたって観客がアニメーションに魅了されること、制作スタジオが過去10年かけて特殊カメラや新しいアニメーション技術に注ぎ込んできた金額が同作の技術的偉業達成に必要であったことが証明された。タイムレスで美しい映画のおかげですべてのリスクは清算されたのだ。『白雪姫』は、いま観てもすばらしい。誰かが光を当てるたびに命を吹き返す古い絵画のようだ。NM

3位『ファンタジア』(1940)

芸術面でもクリエイティブさにおいてもディズニーの最高傑作と言える『ファンタジア』。クラシック音楽に合わせて制作された8編の物語は、オーケストラのサウンドと画像を実に見事に融合させている。オープニングを飾るバッハの楽曲を彩る無形の色彩は赤ん坊を喜ばせる一方、フィナーレの「はげ山の一夜」は大の大人に悪夢を見せるほど恐ろしい。それに、「魔法使いの弟子」はミッキーマウスの魅力が詰まった最高のショーケースであることに誰も異論はないはずだ。同作は、芸術による芸術のための祝祭であり、“クラシック名曲ベスト101”的なCDをはるかに凌ぐ楽しくもシュールな作品である。どうやら、同作を通じてディズニーのアニメーター軍団は、「アニメーションは芸術になれるか?」という議論を始める前から結論を出してしまったようだ。彼らの偉業を観れば、その答えは明白だ。CB

2位『千と千尋の神隠し』(2001)

次から次へと名作アニメーションを世に送り出すスタジオジブリだが、『千と千尋の神隠し』は殿堂入りにふさわしい傑作だ。ファンタジーであると同時に冒険、夢、暗喩でもある宮崎駿の名作は、不思議な魔法によって両親をブタに変えられてしまったせいで幽霊や神々が訪れる巨大な湯屋で働くことになった10歳の少女が主人公だ。宙に浮かぶカエル、ドロドロのオクサレ様、何かをしゃべる頭だけの物体(カオナシ)、水面を走る列車など、同作のいたるところに宮崎監督の潜在意識から引きずり出された何らかの不思議あるいは恐ろしい幻覚が登場する。子供から大人になろうとする少女が常に変わり続ける世界で生きることの大変さを学んでゆく、スリリングで感動的な作品である。NM

1位『ファンタスティック Mr.FOX』(2009)

「ずっと昔から『父さんギツネバンザイ』が大好きだった」と2009年にウェス・アンダーソン監督は、最高傑作『ファンタスティック Mr. Fox』の着想源となった英国人作家ロアルド・ダールの原作について回想した。「初めて手に入れた僕だけの本だった。タイトルのページに名前入りのシールを貼っていたよ」。映画版には、そのようなアンダーソン監督の愛情と手作りのディテールがあふれており、将来に対する不安でいっぱいのフォックス家とその当主が生活のために足を洗ったはずの盗みにふたたび手を染める、というストーリーを見事に表現している。考え抜かれたデザインとドライなウィットがトレードマークのアンダーソン監督の作品だが、ストップモーションスタイルの同作は、監督の精神に優美な繊細さを加えている。さらに、声優陣(ジョージ・クルーニーやメリル・ストリープなど)は、カワイイとはかけ離れた大人びた演技を披露。カルト的人気作でありながらも、目の肥えた家族にふさわしい休暇の娯楽映画だ。同作が描き出す極めてユニークな飼育小屋を見ているうちに、懐かしい記憶がよみがえるに違いない。TG


Text: Sam Adams & Charles Bramesco & Tim Grierson & Noel Murray & Jenna Scherer & Scott Tobias & Alissa Wilkinson / Translated by Shoko Natori

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