中島みゆき、浜田省吾のライブ音源秘話

一つのコンサートで終わりと始まり、再生というテーマが見事に完結していた

・中島みゆき / 糸 〜歌旅〜

中島みゆきさんのライブアルバム『中島みゆき ライブリクエスト -歌旅・縁会・一会-』、2018年に出たアルバムからお聴きいただいております。オリジナルは1992年のアルバム『EAST ASIA』の中に入ってました。今ではカラオケやカバーアルバムで一番取り上げられている曲ですね。これが本物です。このツアーは本当によかったですね。客席の隅で聴かせて頂きながら、何度涙ぐみそうになったことでしょう。言葉に込める気持ちというのが、こんなにも歌を変えるんだと。カバーする女性の方たちは、どこか上手に歌おうとか思っているのかもしれませんが、そういうのを全部超越している歌、気持ち、言葉。それがみゆきさんのライブの「糸」ですね。本当に素晴らしかったです。

みゆきさんのライブアルバムはあまりなかったんです。1987年に発売になった両国国技館での「歌暦」と、ロサンゼルスのスタジオで行なった2007年のスタジオライブ『中島みゆきライヴ! Live at Sony Pictures Studios in L.A.』という2枚しかなかった。共にコンサートツアーじゃないんですね。ツアーの音をはじめて収録したのが2008年の『歌旅』でした。なんでツアーのアルバムがなかったのかというと、ツアーは一期一会であると。一つの会場でそのツアーを記録したり、物語ることはできない。会場の空気、お客さんの雰囲気、メンバーの体調や自分のコンディションも含めて毎回違うんだから、それをCDにはできませんと。2012~2013年のツアーで、ようやくどこの会場でも同じように納得できるライブができるようになったということで、2014年に「縁会」が発売されました。今回のラストツアーが実現していたら、きっとライブでのベスト盤になったんだろうなと思います。この曲も歌われておりました、「麦の歌」。

・中島みゆき / 麦の唄

中島みゆきさんのライブアルバム『一会』から「麦の歌」です。「糸」と「麦の歌」が同じステージで行われたんですよ。それだけじゃないです。「宙船」もありました。そしてこの「麦の歌」の後の本編最後の3曲がすごい曲順だったんです。吉田拓郎さんに書いた「永遠の嘘をついてくれ」、テレビドラマ『やすらぎの郷』の主題歌「慕情」、最後が「誕生」ですよ。そしてアンコールの最後が「はじめまして」。一つのコンサートで終わりと始まり、再生というテーマが見事に完結していた、こんなセットリストは2度とないと思われるツアーでありました。8本の公演を行ったんですね。あの8本だけでもどうにか形にならないだろうかと、客席にいた1人として切に願っております。

Rolling Stone Japan 編集部

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