miletが語る現在までの集大成、坂本龍一からの学び、愛の言葉と心の支え

milet(Courtesy of SMEレコーズ)


狭い視野を捨て、固定観念を取り払うための学び

ーさらにアルバムの背景を掘り下げるため、miletさんに再びプレイリストを作っていただきました。今回選んでくれた5曲のテーマは?

milet:アルバムに直接影響を与えたというより、アルバムを作っていたときの私自身に影響を与えた曲ですね。

ー1曲目は哀愁のピアノと透き通った歌声で知られるイギリスのシンガーソングライター、バーディの「Shadow」。

milet:アルバムの制作中にストレスが溜まっていて。最後の方はツアーの延期(のちに中止)が決まったりいろんなことがあって、頭の思考回路がシャットダウンし始めていたんです。そんなときでも音を感じたくて、この曲を聴きながら部屋の中でバタバタ踊ってました(笑)。

ーバーディについては?

milet:以前から好きでしたね。ここ数年はポップスやエレクトロのサウンドを取り入れていて、曲作りの参考にもなるし、新曲を聴くたびに一皮剥けたように感じるんですよ。それに彼女は、無理やり声を張り上げるではなく、楽そうにファルセットを出していて。その声が私を持ち上げてくれるというか、心の支えになりました。



ー2曲目はロシアの作曲家、セルゲイ・ラフマニノフの「ヴォカリーズ」。1912年に作曲された声楽曲です。

milet:歌詞がなく母音だけで歌っている曲で、さっき話した母音の響きについて考えるきっかけになりました。以前、フルートを習っていたときに、先生がずっとこの曲を吹いていて。私は逃げたくなると過去の曲を探る習性があるので、ボーカル入りのものを聴き直してみたら「そういえばこの曲、昔歌う練習したな」と思い出して。久々に母音だけで歌ってみて、日本語の“オー”と英語の“o”で声の出し方や音の温かみも違うんだなとか、参考になる部分が多かったです。いいタイミングで再会できました。



ー3曲目は坂本龍一さんの「美貌の青空」。『SMOOCHY』に収録されたボーカル入りのポップなアレンジと、映画『バベル』で使用されたクラシカルなインスト・アレンジの2バージョンで知られています。

milet:これはアレンジ面で悩んでいたときに出会った曲で。「Until I Die」は居場所を決めるのが難しい子だったんですよ。最初からエレキで入ったのもあり、打ち込みのドラムやベースでバランスを取ろうと思ったけど嵌まらなくて。「Dome」みたいにポップスに寄せることもできるし、オルタナみたいな感じもいけるけど、この曲の冷静でダークな感じを生かせるのはどういうアレンジなんだろうって。

そんなときに、私はもともとサントラのピアノが入ってる「美貌の青空」が好きで、ラジオで紹介しようかなと思って探したら、ボーカルが入ってるバージョンが見つかって。こちらの存在は知らなかったので、その変わり様にショックを受けたんです。

ーだいぶ違いますよね。

milet:編曲でここまで変わるのかと。「坂本龍一さん超ヤバイ!」って、チャラすぎる感想しか出てこないほどショックで(笑)。そこから最終的に、「Until I Die」はまったく違うアレンジに作り替えました。自分の狭い視野を捨てて、固定観念を取っ払おうと。




ー4曲目はハンバートハンバートの「小さな声」。この曲の歌詞は、今聴くとなおさらしっくりきそう。

milet:気持ちの面で共感するところもありつつ、作詞とメロディの関係性について考えさせられた曲です。私がデビュー前に曲を作り始めた頃、「一音ごとに一語ずつ乗せるのを止めたら、曲がもっと垢抜けてくるよ」ってアドバイスをいただいて。

ー洋楽っぽい乗せ方というか。

milet:その助言に従いながらずっと曲作りしてきたので、感覚的に染みついちゃったんですよね。でも、そこまで意識しすぎるのもどうなんだろう、もっと自由にやろうかなと思いだした頃に「小さな声」を聴いたら、思い切り一音ずつに言葉が乗っていて。私が止めろと言われたことをやっているけど、だからこそ伝わってくるものがあるんですよね。

もちろん、キャラの違いもあると思います。ハンバートハンバートさんは一言一言を噛み締め、一音一音を咀嚼するような歌い方だからこそ、歌詞がフラットに伝わるし感情移入しやすいですよね。でも私の場合、歌詞が意味というより音のように聴こえるのが持ち味でもあって。それぞれの良さがあるけど、言葉の置き方を考えすぎるのはナンセンスだなと、それまでの縛りから解放されるきっかけになりました。



ー今回のアルバムで、その成果を実感できそうな曲は?

milet:「STAY」かな。言葉をパチパチに詰め込んで歌ったら、昔の自分みたいな気持ちになりました。言葉の韻やリズムとか細かいことを抜きにして、「この瞬間に生きていたい」というメッセージを素直に表現できた気がします。

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