PassCode南菜生が語る、アイドルとバンドの狭間で切り開いた独自性

「誰かの真似をしてできるようなことはやってない」

―これは僕が最近感じていることなんですけど、有名なフェスに出演することとか、より多くの人に届きやすい曲を出すことが必ずしも一番大事だと思わなくなっていて。やちいさんとしてはどうですか。

PassCodeの曲が大衆に受けるタイプのものではないことは変わらず理解した上で、ちゃんと届くような曲をつくらないといけないと思ってます。ラウドとかEDMとか、日本でたくさんの人が聴いているようなジャンルではないからこそ、メロディのよさとか、ダンスや歌でしっかりアプローチできるグループでいなきゃなっていう気持ちはあります。あと、フェスにも出たいし、出る気でもいますけど、そこが絶対的なものではないというか、「それはあとから付いてくるものだしな」っていう感じですね。

―以前よりもフラットに見ている感じですね。

出られないからって「なんでだ!?」という感じではないですね。「なるほどね……!」としか思わない(笑)。

―あはは! これは結果的にですけど、自分たちで道を切り開いてる感じがしません?

誰かの真似をしてできるようなことはやってないっていう感覚はずっとあって、だからこそ何が正解なのかわからないし、逆にお手本がないことがよかったとも思ってます。もしちゃんとした道があったとしたら、「このとおりに歩めば売れるんだからそうしたほうがいいよ」っていろんな人から言われて、自分でも「そうなのかも」って思ってたかもしれないけど、そういうのがないからこそチームでいろんな意見を出し合えてるんだと思います。

―アイドルのシーンに行けば「バンドのイベントに出たらいいのに」と言われ、バンドのほうにいけば「アイドルのイベントに出たらいいのに」と言われ、そういう悔しさや、数々の敗北を正しく経験してきたからこそ獲得することができた強さはPassCodeには確実にありますよね。

昔はそういうところで感じる怒りをパワーに変えてライブをしてたんですけど、今はそうじゃなくて、バンド主体のフェスで求められるようになったり、アイドルのイベントに出ないとしても「PassCodeがいたらうれしかったのに」って言われるようになったら私たちとしては正解だと思ってるので、前よりも構えずにいろんなことに挑戦できてるし、もっとジャンルレスになってると思います。

―音だけではなく、気持ちの上でもしっかりクロスオーバーしてきてるんですね。さて、シングル「STARRY SKY」ですが、今や「どんな曲を出してもPassCode」という感じになってきたと思います。

本当ですか? よかった。「PassCodeっぽくない」っていうものがなくなればいいなと思います。最初は「違うな」と思ったとしても、次に似たような系統の曲を出すときには「これがPassCodeだ」って思ってもらえると思います。



―カップリングの「Tramonto」みたいなバラード調の曲も今やまったく違和感ないですよね。

前作『CLARITY』に入ってるバラード調の曲のなかでも「WILL」に雰囲気が近いと思ってるんですけど……自分の中では新木場2日目のライブDVD(「PassCode CLARITY Plus Tour 19-20 Final at STUDIO COAST」)を観たときに、PassCodeの第1章がここで終わったような気がして。ライブをやってるときはそういう感覚はなかったんですけど、DVDのエンドロールを観てるときにそう思って。そんなタイミングで「Tramonto」みたいに新たなスタートを歌う曲があるのが、今のPassCodeにはぴったりだなと思いました。



―これまでにない優しさや穏やかさが表現されてるように感じました。

平地さんからは「春っぽく歌って」って言われてて(笑)。これまではバラードは切なく歌うことが多かったんですけど、これは新しい門出に向けての温かい歌なんだなと思って、いつもよりも温かみのある歌い方ができたらいいなと思いながら録りました。

―自粛期間が終わって、いつの日か再びライブができるようになったとき、現実的な話は置いといて、最初に立ちたいステージはどこですか。

どこやろう……。コーストかな? すぐにライブができるようになるとは思っていないので、これからすごく悩む時期がくると思うんですよ。そのときにどうしたらいいかわからなくなっても、最初のライブが新木場でできたらすべてを取り戻せる気がしてます。

―日々、いろんなことを考えていると思うんですけど、なぜやちいさんはPassCodeとしてステージに立っているんだと思いますか。

なんで……? それは考える必要もないというか……私は今年24歳になるんですけど、人生の1/3をPassCodeとして過ごしてきて、自分の人生で一番大きな8年はPassCodeを始めてから今までのことで、そこがなかったら自分が自分じゃないって思ってるんですよ。だから、今までお世話になってきた人たちに恩返しをしたいとか、メンバーを大きな場所に連れていきたいとか、ファンの人たちにそういう大きな場所で一緒に歌ってほしいとか、いろんな気持ちはもちろんあるけれど、そのためにPassCodeをやってるという以前に、「PassCodeじゃない自分は自分じゃない」っていう感覚があるんです。だから、「なんで」なんてないんです。ただPassCodeが大好きなんです。

<INFORMATION>

「STARRY SKY」
PassCode
USM JAPAN
発売中

初回限定盤


通常盤


RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE