PassCode南菜生が語る、アイドルとバンドの狭間で切り開いた独自性

勝負の2日目、ステージで語った武道館への覚悟

―そのときのやちいさんの心情を思うだけで辛いです。

あと、以前から「日本武道館を目指す」という話がチーム内で出ていて、2日目のMCのときにそのことをお客さんに向けて発表しようかという話になっていたんです。だけど、私的にはいつも上手にライブができているわけじゃないから、そんな状態で発表することへの不安がまずあったし、1日目みたいなよくないライブを2日目にも見せてしまうことになったらそんな発表はとてもじゃないけどできない、ということをライブギリギリまでスタッフさんと話し合ってたんです。でも、実際にMCで話すのは自分だし、いくら「話してね」ってスタッフから言われても自分が言わなかったらお客さんは知りようがない。そんなふうにどっちにも転べるような状態にしてステージに上がって、「どうしようかな……」と思いながら1曲目「ATLAS」のイントロが流れたときに、「あ……今日はイケるかもしれへんな」って。それで、序盤は「本当に大丈夫かな」とかそういうことを考えてたんですけど、ライブが進んでいくうちに「今日はイケる!」っていう確信が生まれて。アンコールのMCが始まったときは何を話そうかまったく考えてなかったし、武道館の話をするかしないかすら決めてなくて。だけど、ほかのメンバーのMCを聞いてるうちに「今なら言える」と思ってああいうMC(「2021年、日本武道館でライブしてもいいですか?」)をしました。

―そんな心の動きがあったんですね。

あの2日間は自分たちの歴史を辿ってる感覚があって。2日間来てくれた人には、本当に辛くてどうしようもないときがありながらもそれを乗り越えようとしている自分たちの姿を見せられたと思います。

―新木場公演では僕もバックヤードにいましたけど、やちいさんは声をかけるのも憚られるぐらいピリピリしてましたよね。

自分でも気づかないうちに1日目のライブでかなり力が入っちゃってたみたいで、ツアーに同行してくださっていた鍼師の方に鍼を刺していただいたんですけど、体のどこを刺しても涙が出るぐらい痛くて、それぐらい身体的にバキバキやったし精神状態もよくなかったから、2日目は満身創痍でステージに出ていくような状態でした。

―それでもあの宣言ができたことは大きいですね。

自分たちが今できることを全部やったっていう感覚があったのと、ほかの3人のMCを聞いてるなかで希望が生まれたというか。

―ただ、宣言をした今、そこへ向けて走っていかなければならなくなりました。コロナは別としても、プレッシャーがかかる状態になっているわけですよね。

プレッシャーというより、約束が増えたというか。ファンの方と約束したことは絶対にやらなきゃという思いもあるし、今、自分たちができることよりも大きいことを約束した分、そこへ向けてやらないといけないことが増えたなっていう感じです。言ったからには絶対にやらなきゃっていう責任感はもちろん芽生えましたけど、宣言してなかったとしても、そういう大きなところを目指していかなきゃなっていう感覚はあったと思います。

―今の話を聞いていて改めて感じましたけど、PassCodeは日に日に信頼できるグループになってきていますよね。変な質問になりますけど、なんでそんなふうに思わせることができているんだと思いますか。

いやぁ~、それはわからないですね(笑)。でも……誠実でいようとは思っています。もちろん、関わってくださる人がたくさんいるなかでやっていることなのでお金も大事ではあるんですけど、メンバーとしては、お金じゃなくてファンの方に対して何をどう伝えたいのかとか、利益のことを取っ払った上で物事を考えようと思ってます。仕事ではあるんだけど、売れるためだけにやっているのではないっていうことをわかってもらえるように誠実でありたいなと思ってます。

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