LUNA SEAのSUGIZOとINORANが語る「連帯」と「愛情」

『MUSIC AID FEST.~FOR POST PANDEMIC~』開催の発端

―LUNA SEAとしてはこれ以外に新曲を考えていたりするんですか?

SUGIZO:いや、LUNA SEAとしては考えてないです。本来ならこの時期は新しいアルバムのツアー中ですからね(苦笑)。で、実は自分の次のアルバムの制作期間だったんです。そもそもの予定だと。今月来月はソロアルバムのレコーディングが入ってたんですが、予定していた国内外のミュージシャンとのセッションがすべてできなくなってしまった。なので、進めていたソロの作品は一度延期しました。その代わり急遽方向性を変え、ほぼ自分一人でできる内容のアンビエント的なアルバムを新たに制作しています。パンデミックを終えた後の世界に向けての救済になるような、イメージとしてはポストコロナ、ポストパンデミックです。今秋のリリースを目指しています。

―表現者としては充実の日々を過ごしていらっしゃいますね。

SUGIZO:同時にやっぱりすごくやるせないんです。災害が起きた時、いつも自分が直に力になれる手法があるんです。地震や水害や、または難民キャンプでも、自分が体を動かしてアプローチすることで、少しでも人の助けになっているという実感がありました。今回はそういう意味で言うと、手の出しようがないと言うか、ただ耐えるしかない。ひたすら応援する、お金や物資を寄付する、そういうことしかできない自分の無力感をつくづくと感じています。

―でも傍観しているだけではなく、5月31日にはLUNA SEAがホストを務める特番『MUSIC AID FEST.~FOR POST PANDEMIC~』が無料放送されます。

SUGIZO:4月19日にレディー・ガガのキュレーションで行われたチャリティー・コンサート「One World: Together At Home」が素晴らしくて感銘を受けたんです。今こそミュージシャンが連携を取って一つになっていくべきだと強く思い、「One World」のコンセプトをオマージュした日本版をやりたいと思いました。それとまったく同じタイミングでINORANも同じことを思って、連絡を取り合って進めたんです。実は5月29日からの3日間はもともとLUNA SEAのツアー「CROSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL」だったんですよね。31日は生放送で枠を取ってあったのですが、その枠も宙に浮いてしまっていました。そこを使ってLUNA SEAの呼びかけで多様なアーティストに参加してもらうフェス番組をやろうということになったのです。

INORAN:社会の一員として、責任のある立場として、この状況下でできることをSUGIZOと話し合って、いろいろ揉んで模索した結果が『MUSIC AID FEST.~FOR POST PANDEMIC~』です。簡単にいうと、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため尽力している医療従事者やフロントラインワーカーの支援を目的としたTVフェスです。

SUGIZO:このパンデミックはいずれ終わりが来ますし、感染症も必ず収束しますが、そこから経済の大恐慌が始まっていくでしょう。また食料自給率が低い日本では食の危機に直面する可能性もあります。そう考えるとまだまだコロナ禍は先が長く、医療従事者やフロントラインワーカーの方々の手助けがやはり重要だと確信しています。

ーなるほど。

SUGIZO:もう一つ大切なことがあります。ポストパンデミックで新しい価値観・新しい世界が始まる時に重要なのが、今まで以上に僕らが手を取り合うべきということです。僕はミュージシャンなのでアーティストの話をすると、一人のアーティストが強力な力を持って多くのことを中央集権的にやるのではなく、スマートグリッド方式が必要とされていると思うんです。一人ひとりのミュージシャンが手を結んで、できることを分けあって、お互いに協力し合う。それはこの10年ぐらいで音楽の世界では浸透しつつあるんですが、ここにきてその流れがもっと大きく表に出るべきだと思っています。アイデアを出し合って、大人数で一つのものを作るべきです。

日本はその点で、すごく遅れをとっていた気がするんですね。欧米では80年代にLIVE AIDやWe Are The Worldがありました。あれは貧国や弱者の人達への支援から始まったことなので、今回とは状況は違いますが、ミュージシャンが手と手を取り合い連携したという点では類似していると思います。日本では3.11を経て価値観が大きく変わったものの、数ある復興イベント等では参加するミュージシャンの顔ぶれが限れてくるという問題もありました。これから僕も含めたアーティストは活動的に苦しくなることが多いと思います。発表の場も狭まりますし、ライブが以前のような形にいつ戻れるか分からない中、僕らは僕らでやっていかなくてはいけないわけです。それぞれがインディヴィジュアルで悩んでいる場合じゃなくて、手を取り合うべきだと思います。このフェスが、その一つのきっかけ、というか布石になれば本望ですね。

INORAN:フェス用にリモートで演奏してくれたアーティストのライブ映像を生放送でオンエアするんですが、LUNA SEAのメンバーそれぞれが出演者に主旨を説明し、出演を依頼しました。もちろん番組にはLUNA SEAのメンバー全員が出演します。

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