また、ビョークを輩出したシュガーキューブスの創設メンバーで、レイキャビク市議会議員となったベネディクトソンはこう語っています。
「自分にしたって音楽だけをやっていたことなんて一回もない。音楽だけで生計を立てていた唯一の時期はシュガーキューブズがブレイクしてからの数年だけで、いまに至るまで音楽だけをやっていたことはない。いまは市議をやってるしね。そもそも、アイスランドにおいては仕事を掛けもちするのはとりたてて珍しいことじゃないんだよ」
インディペンデント音楽コミュニティー支援団体SustAimのnoteでの記事「音楽で飯を食わなくてもいい。toe山嵜と考えるアーティストとお金の関係」でも同様のことが語られています。この記事を取材された、グラミー賞ノミネート・アーティストのstarRoさんは、toeというバンドが「『音楽一本でやらないと成功はできない』の嘘(他の仕事で稼ぎながら音楽を続けることのメリット)」「お金をかけてプロモーションしなくても、音楽自体に『引き』があれば、コアファンが世界中にできる」ことを証明したとし、「幸せなアーティストライフを末永く続けていくためには、できるだけ自分のままでいられる環境を作ることが大事。音楽以外にも仕事をしてお金の心配を減らすとか、過剰な期待は初めからしないといった、環境づくりがもっと重要と言えるかもしれない」とまとめています。
私の肩書のひとつである「産業カウンセラー」の倫理綱領には「勤労者の上質な職業人生(QWL : Quality of Working Life)の実現を援助し、産業社会の発展に寄与する」ということが使命のひとつとして書かれています。一般的なカウンセラーよりも「産業」「職業人生」ということに視点が置かれていることが特徴の一つでもあります。COVID-19の感染拡大に伴う産業の変化は、私たちのメンタルとQWLにも大きく影響を与えます。こんな時だからこそ、今までの職業人生のあり方を、それぞれが見直してみることが必要なのだと思います。
参照:
「芸術家の地位をめぐる国際的動向-1980 年 UNESCO「芸術家の地位に関する勧告」の実施状況から- 」中尾友香 京都大学生涯教育フィールド研究 2014.02.28:
http://hdl.handle.net/2433/185588
Professional Artist
Association Internationale des Arts Plastiques International Association of Art
http://www.aiap-iaa.org/professional.artist.htm
「MUSIC OF OUR TIMES これからの音楽 21世紀をサヴァイヴするコンテンツビジネス」Wired Vol.8 2013年
「音楽で飯を食わなくてもいい。toe山嵜と考えるアーティストとお金の関係」
SustAim 2020/05/21
https://note.com/sustaim/n/n7664be1264ea#Bmogc
<書籍情報>
手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』
発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。
手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。
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