幸せなアーティストライフを続けていくために 職業人生のあり方とは?

これらの定義と、特にポピュラー・ミュージックに関わっている日本のアーティストたちの現状とは、少し距離があるように感じます。以前ほどではないにせよ、「メジャーの音楽メーカーや、しっかりとしたレーベルやプロダクションに所属しなければ」という意識もまだまだ根強いようですし、「○○歳くらいまでに稼げなかったらきっぱり引退して就職する」とか、反対に「就職などせずに音楽にだけ打ち込むべき」と考える人も多いようです。

そうした方法が適している人もいるでしょうが、一方でそのような考え方は、実は世界的に見ると必ずしも一般的とは言えません。雑誌「WIRED」で「氷の島と音の巡礼:アイスランドの音楽エコシステムを巡る」という特集が組まれたことがあるのですが、それを参照してみます。アイスランドの人口は約35万人しかありません。しかし、そこからビョークやシガ・ロスなどの世界的に活躍するアーティストたちが生まれています。アイスランドの音楽が国外で商品力を持つ理由について、ビョークとのコラボレーションで知られるアメリカの作曲家のニコ・ミューリーは次のように語っています。

「大きな要因は、そもそも国内のマーケットが小さいことですね。音楽を志す人は、みな前提として北欧やその他のヨーロッパを目指すほかないということがあります。また、同じ理由から、それで儲けなきゃという圧迫が少ないのです。2万枚売れればメガヒットという国では、マーケティング先行で音楽をつくることにほとんど意味がありません。ですからアーティストは自由に音楽をつくることができるのです」、「面白いのは、そうした自由な音楽こそが海外で評価されるということです。アイスランドにもポップスターはいますが、海外ではまったく知られていません。当然だと思うんです。どこの国にもその国のポップスターはいるわけで、何もアイスランドから似たようなものを輸入して聴きたいなんて誰も思いませんよね。アイスランドの音楽が、世界的に評価されているのは、それが、ほかのどこにもない音楽だからだと思うんです。そしてそれを生み出すために大資本は必要ないのです」


Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE