ピンク・フロイド『狂気』知られざる10の真実

ピンク・フロイド『狂気』のジャケット写真


3. 『狂気』がリリースされる1年以上前に、バンドは同作の曲をコンサートで披露していた

リッチなテクスチャーとスペーシーなアレンジが魅力の『狂気』は純粋な「スタジオ」プロジェクトのように思えるが、バンドはアルバムが発表される1年以上前に、コンサートの場で全曲を収録順通りに演奏している。同作からの曲が初披露されたコンサート『Dark Side of the Moon: A Piece for Assorted Lunatics』(当初はこれが正式なタイトルになる予定だった)は、1972年1月20日にBrighton Domeで行われた。当日のショーは思いがけず中断してしまったものの(ウォーターズは「極めて深刻な機材トラブル」が理由だったとしている)、バンドは1972年に行ったその他の公演でもアルバムを丸ごと再現しており、楽曲(および曲間のトランジション)に磨きをかけていった。結果的にバンドは、アルバムに収録される10曲全てをアビーロード・スタジオの16トラック・マスターテープの同一リールに録音した。その風変わりなアプローチにも関わらず、同作は途方もない成功を収めることになる。

「曲と曲のトランジションは、あの作品において極めて重要な要素となっている」アラン・パーソンズは2011年に本誌にそう語っている。「だからこそ私たちは、それをミキシングの過程ではなく、あくまでレコーディングプロセスの中で生み出すことにこだわった」



4. 「走り回って」の当初のライブアレンジは、エレクトロニクスを多用した音源バージョンとは完全に別物だった

『狂気』の全曲は1972年の時点で既にステージで披露されていたが、スタジオ作業で最も劇的な変化を遂げたのは「走り回って」だった。「The Travel Sequence」という仮タイトルが付けられていたそのインスト曲は、当初はギターを軸としたジャム調の曲だった。しかしポータブルなモジュラーアナログシンセのEMS Synthi AKSが登場したことで、同曲にはエレクトロニクスを多用したアレンジが施されることになる。スーツケース型の筐体の中にキーボードとシーケンサーが組み込まれていたそのシンセサイザー(皮肉なことに、同曲はウォーターズの飛行機に対する恐怖心から生まれた曲である)は、同じく『狂気』に収録されている「望みの色を」でも使用されている。「あの機材の可能性は無限大だった」ギルモアは本誌にそう語っている。「私たちは常に、自分たちの音楽にエレクトロニックな要素を見出していた。3次元的に響くサウンドを、私は常に探し求めていたんだ」


Translation by Masaaki Yoshida

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