ピンク・フロイド『狂気』知られざる10の真実

ピンク・フロイド『狂気』のジャケット写真


1.『狂気』は初めてロジャー・ウォーターズが全ての歌詞を手がけたピンク・フロイドのレコードである

1968年作『神秘』以降、バンドのベーシストであるロジャー・ウォーターズは歌詞の面でピンク・フロイドの作品に貢献し続けていたが(彼は1967年発表のデビューアルバム『夜明けの口笛吹き』におけるインスト曲「パウ・R・トック・H 」「星空のドライブ」でも共同作曲者としてクレジットされている)、『狂気』では初めて全編の歌詞を単独で手がけている(以降そのケースは何度も繰り返されることになる)。コンセプトに基づいて一貫性を持たせるだけでなく、ウォーターズは『狂気』の歌詞をバンド史上最も明快でストレートなものにしようと決めていた。

「バンドにおいて、私は以前からそのことを強く主張し続けていた」Mark Blake著『Comfortably Numb – The Inside Story of Pink Floyd』内で、ウォーターズはそう話している。「宇宙の境界線だとか、そういうシド・バレット(バンドの最初のリーダーであり、『夜明けの口笛吹き』の曲の大半を手がけている)が入れ込んでいた奇妙な世界観や政治的で哲学的なものに、私は必死で反発していた」

『狂気』の歌詞の全編をウォーターズが手がけたことは、後にエスカレートする他のメンバーとの対立の火種となるものの、当初それは歓迎された。「私は自分の作詞能力を決して高く評価していなかったし、ロジャーはずっとやりたがっていた」ギルモアは2011年に本誌にそう語っている。「彼が全編の歌詞を担当することになって、私は安堵したくらいだ。しかし、それによって彼がバンドの主導権を握ることになったとしても、作曲面までもが彼に一任されるわけじゃない。その点において、私たちは長く対立することになった」

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2. アルバムのタイトルは『Eclipse』でほぼ確定していた

制作に着手した当初から、バンドはそのアルバムを『Dark Side of the Moon』(宇宙というテーマとは対極的だった)と名付けることを決めていたが、1972年にイギリスのヘヴィなブルースロッカーのメディスン・ヘッドが同名のアルバムをリリースしたことを受け、彼らはタイトルを『Eclipse』に変更しようとした。「メディスン・ヘッドの連中に腹を立てたりはしなかった」ギルモアはSound誌にそう語っている。「彼らのアルバムが出る前に、私たちはあのタイトルを思い付いていただけに悔しかったけどね」。しかしメディスン・ヘッドのアルバムがあまり注目されなかったため、ピンク・フロイドはタイトルの変更は必要ないと判断した。


Translation by Masaaki Yoshida

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