松田聖子、新世代の作家陣起用と女性主人公の成長を描いた1984〜88年



1984年8月発売、18枚目のシングル『ピンクのモーツァルト』。作曲が細野晴臣さんで、アレンジが細野さんと松任谷正隆さん。このクラシックのような煌めきと大地のようなリズム隊と言うんでしょうか。いくつかの要素がここに入っている。シュールといえばシュールな曲だなという感じがしました。先週お送りした最後の曲「Rock’n Rouge」の時に、松本隆さんが失踪したとユーミンが明かしておりました。この頃、松本さんは"第一次やる気無くす期"に差し掛かっていた時期です。松本さんの色々なコメントを見ていますと、この曲については「ほとんどシュルレアリズムで、これでも売れるんだと思った」という話が残っていますね。歌詞も聴き方によってはとてもセクシーな歌詞と捉えられるわけで、関わっている作家陣にとっても転機が来ているなと感じられる曲だと思います。



1984年11月発売の『ハートのイアリング』。作詞が松本隆さんで、作曲がHolland Roseという英名になっているんですが、これは佐野元春さんのペンネームですね。音が大滝詠一さんの流れを継承していると言うんでしょうか、フィル・スペクターサウンド、ウォール・オブ・サウンドという音の造りですね。先週、先々週お聴きいただいた曲は財津和夫さん、大滝詠一さん、呉田軽穂(ユーミン)、細野晴臣さんらのシングルが多かったんですが、この辺から作家陣に世代交代が起こります。次の世代が登場してくるんですね。佐野さんもその一人です。この曲の収録アルバムが1984年12月に出た『Windy Shadow』ですね。この話は先週もちょっとしましたが、1984年というのは松本隆さんが大滝詠一さんとアルバム『EACH TIME』を作り、南佳孝さんと『冒険王』を作った年です。『EACH TIME』は全曲作詞を手掛けており、『冒険王』ではプロデュースと作詞を手掛けておりますね。聖子さんもこの年にアルバムを2枚出してます、『Tinker Bell』と『Windy Shadow』。そして、この間に聖子さんはコンサートツアーを4回、映画『夏服のイヴ』でも主演してます。さらにTVや雑誌、CMもあったわけですよ。聖子さんはもちろん、関わった人がどれくらいのスケジュールでこのアルバムを作っていたんだろうかって考えると、ちょっと気が遠くなるくらいのハードスケジュールだったんではないかと思いますね。この『Windy Shadow』も、関わった人たちがずっと松田聖子像を作り続けてきて、ここに辿り着いたアルバムという気がします。アルバムの1曲目がそういう印象だったという事もあって、この曲をお聴き頂きます。「マンハッタンでブレックファスト」。

Rolling Stone Japan 編集部

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