コロナ偽情報をまき散らす動画で注目集めた博士、陰謀論者が絶賛する理由

2011年、ネバダ州リノにあるウィットモア・ピーターソン神経免疫疾患研究所で研究主任を務めていた頃のジュディ・ミコヴィッツ博士(Photo by David Calvert/AP)



許されない言い訳

『Plague of Corruption』は本質的には、自画自賛の聖人伝だ。ミコヴィッツ博士は全編を通して自身をガリレオやマーティン・ルーサー・キング・ジュニア、トマス・ジェファーソンに例えている(後者に関しては、途中『ハミルトン』の歌詞を引用している)。誰かに言われた「非常に聡明」という発言を引用した箇所もある。『Plague of Corruption』には悪役がわんさと登場するが、中でもミコヴィッツ博士のお気に入りはアンソニー・ファウチ博士だ(『Plandemic』にも登場している)。「公衆衛生の重要な真実が語られない理由を問いかけてみれば、犯罪現場から彼らの痕跡がきっと見つかるだろう」と述べ、その例としてファウチ博士を挙げている。

特に言語道断極まりないのが、ミコヴィッツ博士の研究を闇に葬ろうと、2013年に他界したウイルス学者クアン・テ・ジャン氏を殺害するようファウチ博士が命令した、と仄めかす箇所だ。「噂によれば(ジャン氏は)遺書を残していたが、国立衛生研究所警察に没収されてしまった。故ビンス・フォスター氏(訳注:クリントン政権の大統領次席法律顧問、死因は自殺と断定されたが他殺説を唱える陰謀論もある)のブリーフケースから見つかった破れたメモとよく似ているではないか」と彼女は述べ、さらに極右陰謀論者らしい響きを漂わせている。

ミコヴィッツ博士は自らを、信用のない科学者ではなく、果敢にも不都合な質問をしたために罰せられた者であるかのように描いている。「私はキャリアを通して、新しい考えを受け入れ、既知、あるいは既知だと思われている事柄とどう適合するか確認してきた」と彼女は書いている。ミコヴィッツ博士や彼女のキャリアと関係のない文脈でこのような発言を否定するのは、どんな分別のある人間でも難しく、そこがまさに狡猾な点だ。古くからの謎を追究し、新しい考えに寛容であることは、結局のところアメリカ合衆国の中核をなす信条だ。だからこそ陰謀論はあっという間に広まり、それを止めるのは難しい。確立された真実に真っ向から歯向かう者を非難するのは簡単だが、ただ単に「疑問を呈した」、あるいは生来の好奇心を示した者を責めるのはずっと困難だからだ。

もちろん『Plandemic』の人気でわかったように、世界的パンデミック下で「疑問を呈している」と言う言い訳は通用しない。その疑問が政治的意図や自分勝手な目的と切っても切れない場合は尚更だ(ミコヴィッツ博士の場合は間違いなく両方だろう)。怯える大衆が誤情報に呑まれ、政府への不信感を煽られる中、悪い考えは一層受け入れられやすくなっている。その過程で重要な役割を果たしたのは、(『Plague of Corruption』の売上急増をみすみす許した企業も含む)ソーシャルメディアだ。

Translated by Akiko Kato

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