starRoと手島将彦が語る 米国での経験をもとに考える音楽家のメンタルヘルス

starRo:自分自身を見つめるっていう意味で言うと、スタッフにも同じようなメンタルヘルスの認識の問題があると思うんですよ。産業構造上、どうしてもアーティストは弱い人、マネージャーはサポートしているまともな人みたいに見えちゃうけど、実はそうじゃない。皆それぞれの性質に合う合わない部分があるだけの話。関わっている皆が、自分のメンタルヘルスをちゃんと見ないといけないと思うんです。作った作品も、スタッフ含め他の誰かが100%理解できるなんてあり得ない、という前提に立たないといけない。個人的な想いで作ったものを、どうやって広めていくかはもう別のプロセスなので、単純に俺とお前は一心同体だ、一緒だっていうのはリスクなんです。自分の得意なことはその領域で発揮してくれればいい。でも、クリエイションのプロセスでも、違う人格である他人が指示したりアドバイスしたりすることがある。なぜそうなるかというと、そのスタッフ自身の問題もあるかもしれない。関わる人皆が自分のことを見つめて、その上でどうやっていくかを考えていくのが本当のメンタルヘルス問題だと思うんですよね。

ーその方が皆働きやすいですよね。アーティストとレコード会社の関係で生まれる関係性の問題って、免れられないのでしょうか?

手島:今後そういう関係性が変わっていくんじゃないかな? というか、変わっていかないといけないところなんですよ。

starRo:資本主義社会の中だと、ストリーミングの再生回数なんかが分かりやすい指標だと思うんです。例えば1千万回再生できる人=成功っていう分かりやすい指標がある。でもそこに追いつけないから悩む。音楽で評価されるだけでも大変なのに、ランキングトップ10に入るなんてもっと難しい。

―そういう指標に翻弄されてしまいがちですよね。

starRo:でも、皆がそれを目指さなきゃいけないわけではないんですよ。その人の求めていることが、単に自分の作品をいいねって言ってもらいたいだけということだってある。今はYouTubeでも発信できるから、TVに出る事がそんなに大事なのか? ということにもなる。そもそもレーベルとかマネージメントとの契約もマストでないし、色々な人が関わることによって、アーティストとしてのクリエイティブ・コントロールが無くなるリスクもある。「お前の好きなようにやれよ」って言われても、それが100%は達成されず、95%達成できても、アーティストにとっては、残り5%が原因で総崩れしちゃうこともあるんです。そこを大事にしないといけないし、できるだけ信頼のおける人と仕事をしないといけない。それを無視したビジネスをしやすくする為のキャリアパスがあると、ミュージシャンのパーソナリティーや、作る音楽さえも関係なくなっちゃう。逆に一人一人の趣向とか情緒を気にしたら、ビジネスとしての成功が難しくなりますしね。メンタルの問題を無視して最大公約数で挑んでいくから一層辛くなっていくんですよね。

手島:今後そういうモデルが変わってくる中で、レーベル側も順応できるかが大事だと思うんです。メンタルヘルスをちゃんと考える、知識があるっていうことは、できるだけ自分らしくいられるということ。自分らしくいられないからメンタルの不具合が起きうる。ビジネスを考えても、その人らしい表現や価値が前面に出た方が、これから上手くいくと思うんですよ。お金とか関係なしに本当にやりたいことを好きにやったもので、それが最終的に売れてお金を産む。そういう世の中に変わりつつあるわけじゃないですか。

starRo:間違いないです。

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