価値観の似た者同士が集まる危険性 なぜ判断を間違うのか?

この「エコーチェンバー」は、特にSNSの普及以降指摘されることの多くなった現象です。これは、価値観の似た者同士がSNSなどで交流し共感し合うことで、そこでの意見や思想が増幅されていく現象のことで、過剰に攻撃的な意見やフェイクニュースの拡散の一因にもなっています。検索サービスに関しても、ユーザーの好む結果を表示する機能のために同様の偏りを生じてしまうことがあり、それは自分自身が作り上げたフィルターにバブル(泡)のように囲まれているようだ、ということから「フィルターバブル」と呼ばれます。エコーチェンバーにしろ、フィルターバブルにしろ、自分と違う立場や意見に触れる機会が減ることで、偏りが助長されてしまいます。

何らかの集団の中での意思決定には、これ以外にも様々なバイアスが生じます。以前取り上げた同調圧力もその一つですが、エコーチェンバーと似たものに、「集団極化」としてのリスキーシフト、コーシャスシフトと呼ばれるものがあります。会議などで自分と同じような意見が出ると、確信を高めてもっと強く主張したり、さらに負けじと、より極端な意見を言ってしまったりするケースがあります。それに引っ張られた結果、メンバーが実際に思っているよりも結論の危険度が高いものになってしまうことをリスキーシフト、反対に過度に慎重なものになってしまうことをコーシャスシフト、と言います。

また、「集団的浅慮」と呼ばれるものもあります。これは「グループ・ダイナミックス –集団と群集の心理学」(釘原直樹著・有斐閣)によると「集団問題解決場面で成員が集団維持(集団の一体感や心地よい雰囲気の維持)にエネルギーを注ぎすぎるあまり、パフォーマンスに十分な注意が向かなくなるために解決の質が低下する現象」です。同書を参照して、集団的浅慮の8つの特徴を紹介します。

1. 同調圧力
2. 自己検閲(同調圧力によって異議が封じ込められる前に、自分から意見を述べることを控える)
3. 逸脱意見から集団を防衛する人物・マインド・ガードの発生(「そのようなことを言うと君の将来のためにならない」などと脅しをかけて反対者に圧力をかける存在)
4. 表面上の意見の一致(本心は「反対」なのに、誰も「反対」と言わないので「他の人も賛成」と思い込んでいる状態で、会議の後などで、実は多くのメンバーが内心では反対していたことがわかる、と言うようなケース)
5. 無謬性の幻想(メンバーが「自分たちは選ばれた優秀な人物で失敗することはない、自分たちが一致団結すれば障害は容易に乗り越えられる」と思い込む)
6. 道徳性の幻想(メンバーが共有する理想の実現を優先して、そのためには少々の犠牲や非倫理的行為も許される、と自分たちの意思決定を正当化する)
7. 外集団に対する歪んだ認識(外集団に対して見下したり不正確で否定的な認識を持ったりする傾向)
8. 解決法略の拙さ(上記のような状態の積み重ねによって、決定の質が低下する)

いかがでしょうか? こうしたことは、SNSも含めた実生活の中で、誰でも多かれ少なかれ経験があるのではないでしょうか。

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