NYの三つ星レストランが炊き出し施設に変身、シェフが語る飲食業界の未来

生き残るのは改革を起こせるところだけ

IRCは議会に書簡を送りプログラムの改編を要求したが、4月21日にPPPに3200億ドルが追加されても、大きな変化はなかった。「議会は各地の地元のレストランが永久に閉店することになっても気にしないことが、本日はっきりいたしました」とIRCは書面で対抗し、全米で急増する失業保険申請者のうち60%は元飲食業従業員である一方、サービス業に割り当てられたPPPの融資は全体の9%にも満たない、と指摘した。

「この短時間で発生した大量解雇は、構造的・長期的問題になる恐れがあります」とマーカス氏。「他の業界とは違うんです。パッと再開しても直ちに全員復職出来るわけではありません。立ち上げにお金がかかることは、レストランを開業したことがある人なら誰でも知っています。売上の50%減は妥当な予測だと思います」

仮に再開出来たとしても、レストランは前代未聞の向かい風に直面するだろう。目前に迫る景気後退は可処分所得の減少を意味する。それに加え、密閉された空間に密集することを躊躇する風潮や、コロナウイルスの第二波が訪れれば、さらに自宅待機命令が続く可能性もある。デリバリー人気は高まるばかり。自宅待機で再評価されるようになった、自宅調理もまた然りだ。「うちの店は34席が全て埋まってやっと儲けが出ます」と言うのは、マンハッタンに小さなレストランを数軒構えるゲイブ・スタルマン氏。「34席が全て埋まらないと元が取れません。17席埋まらなければ無理です。続けられません」

コロナウイルスの襲来以前から、業界はビジネスモデルを見直す必要があった。今後はそうすることを余儀なくされるだろう。個人経営店のオーナーは、この先何年続くかわからない休閑期間を見据え、工夫された解決法を編み出す必要がある。「今後、多くのレストランが閉店することになるでしょう。再開出来たとしても、自分たちのビジネスモデルが通用しないことに気づくのではないでしょうか」。がらんとしたEleven Madison Parkのホールの角席に深く腰掛け、テイクアウト用の透明プラスチック容器に入ったコーヒーを啜りながら、ハム氏は言う。「間違いないと思います。生き残るのは改革を起こせるところだけでしょう。大きな変化を目の当たりにすることになると思います。本当に。私にとって、全てのことに新しい意味が出来ました。今は自問自答しているところです」

Translated by Akiko Kato

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