石若駿が語るドラム哲学、音と人間のハーモニー、常田大希らと過ごした学生時代

石若駿、新宿PIT INNで撮影(Photo by Kana Tarumi)


「ドラムが上手いとは思わない」
自身に対する認識を語り始める

ー石若くんから見て、ドラムってどんな楽器ですか?

石若:ドラム一台だけで万人を踊らせることができると思っていて。それだけのパワーを持っているし、人間にダイレクトに響く作用がある。すごい説得力でもって、場の空気を変えることができる楽器だと思いますね。あとはバンドのなかの指揮者とかよく言われますけど、まさにその通りだなと。シンバル一発でフロントマン的な役割を果たすこともできるし。

ー石若くんはドラムソロを叩きまくってるときも楽しそうだけど、バンド全体の演奏が噛み合った瞬間にいい表情してる気がします。

石若:そういうのって奇跡だなーと思うんですよ。音を出しながらみんなでコミュニケーションを取って、「あっ、今同じこと思ったよね?」って瞬間が一番楽しい。言葉で説明したわけではないのに、なるべくしてそうなったというのが。そういう経験をビッグバンド時代からしてきたので、そこに楽しさを常に持っています。


スネア
スネアは石若にBonnyを紹介した先輩ドラマー、松下マサナオ(Yasei Collective)のおさがり。胴体の鮮やかなスパークルは中国の腕利き職人が手掛けた。「普通は薄い膜をカバーリングで貼るけど、これは塗装だから傷つくと剥がれやすい。それもまた味かなって」(Photo by Kana Tarumi)


バスドラ
「BOP」を監修した石若のプレイヤー視点に立ったこだわりは、ラグというヘッドの張り具合を調節するパーツにも反映。「曲の最中に『音を高くしたいな』『ローを出したいな』と思ったら、チューニングキーを使わなくても演奏しながらこうやって(写真のように)回して調整できる。ヘッドの交換も簡単で、一石二鳥なラグですね」(Photo by Kana Tarumi)

ー自分のプレイにはどんな特徴があると思いますか?

石若:実は自分って、そんなにドラムが上手じゃないと思っていて。

ーそんなこと言ったら怒られますよ(笑)。

石若:なんだろう……ハーモニーとの向き合い方かな。ドラムってオーケストラで言うとスコア上に書いてあることの下地を担っていると思うけど、僕の場合はLR(楽譜で左手/右手のショットを指す記号)という感じじゃなくて、フルートやクラリネットを吹くみたいに「タラララ~」ってイメージで叩いていて。あとはクラシックも勉強したので、他のドラマーよりも「響き方」を考える瞬間が多いと思いますね。このくらいの力加減や音量で叩いたら、客席にどんなふうに聴こえるのかなとか。アコースティックな現場では特にそう。

ーそれってコツとかあるんですか?

石若:やっぱり耳の使い方ですかね。それはいろんな先生から言われました。ちょっと離れたところに耳を置いて、そこで聴いたときに豊かに響くようなイメージでやってみましょうって。そういう経験をたくさん積んできたのは自分の強みかなと。その点で大好きなのはポール・モチアン(ビル・エヴァンス・トリオなどで活躍したドラマー)。立体的だし形を変えながら伸縮するような感じで、空間をしっかり捉えている。そういう演奏に憧れます。


Istanbul Agop Traditional Dark Ride、Turk Jazz Ride
 「ドラマーの好みが一番反映されるのはシンバル」と語る石若は、シンバル発祥の地、トルコの老舗メーカーIstanbul Agopともエンドースしている。写真右は26インチの大口径シンバル。このサイズを使うドラマーは珍しいが、演奏中に他のメンバーが鳴らす和音・倍音と共鳴することで、よりハーモニーが表現しやすくなるという。(Photo by Kana Tarumi)

ーそこまで考えてるのに、なぜ自分のドラムを上手くないと言うんですか。

石若:今の時代は、テクニックがすごい人ならめっちゃいるじゃないですか。そういう人たちを見て、少し前だったら「俺だって叩けるよ!」と張り合ったけど、最近の自分は「そういうドラマーじゃないからできないな」と思うようになってきたんですよね。それよりも響きや音色、ハーモニーへの比重のほうが大きくなっている。(石若は)何でもできるとよく言われますけど、何でもやろうとすると失われることって結構あると思うんですよ。それよりも自分の強みを磨いていこうというのが最近の方針です。

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