BiSHモモコと篠塚将行のむき出し対談「傷つけられたままで終わりたくない」

私は生きることってずっと闘いだと思ってるんです(モモコ)

モモコ:ありがとうございます。

篠塚:バンドを組む前、当時付き合ってた女の子がレイプされたんです。コンビニ行ってくるって出かけた後に。一緒に警察行ったりしたけど結局泣き寝入りするしかないような状況になって。その後、バンド活動を始めてライブをしに出かける度に、その子が死にたいって言ってトラックに飛び込んだりするようになって、つまり、俺がライブをするだけで自分の好きな人が死ぬかもしれない。だから、自分がライブに行くことも、音楽をやることも、対バンの人が楽しくやろうぜって言ってることも、全部許せなくなってしまった時があったんです。僕はたぶん、そのことを今もすごく引きずってるんだと思う。もうその人とは一緒にいないし、俺は誰も守れなかったけど、今でも「何が音楽だよ」とどこかで思ってるし……そんなこと思っちゃいけないんだろうけど。誰かに向けて歌ってるのに、自分のことしか考えてないじゃんって思っちゃうこともある。でも、本当はそれでいいはずで、自分もそういうアーティストが好きだし、大衆性という枠からはみ出してしまう歌というか、マイノリティの俺たちにしかわからくても、それでも自分の気持ちを、自分の言葉で歌えばいいんだって思う。

モモコ:私も過去に体験した悲しい経験、心の中で感じた汚い気持ち、そういう気持ちをいい意味で忘れずにいたいというか、そのときの時間を生きた自分の証でもあるわけじゃないですか。

篠塚:それがあって、今の自分がいるんだもんね。

モモコ:さっき「暗号」って言われてましたけど、そこに気づける人にしかダイレクトに届かない作品ってすごく重要だと思うし、私にとってはそれが音楽で、それでも世界が続くならの「参加賞」って曲だったんです。篠塚さんの本(『君の嫌いな世界』)で、「生きることは傷つくこと苦しむこと」っていう言葉が出てきますけど、私は生きることってずっと闘いだと思ってるんですね。常に何かと闘っていて、BiSHに入ってからは尚更そう感じるようになってきて、生きること=傷つくことっていうのはすごくわかる。でも優しい人ほど傷つきやすいじゃないですか。篠塚さんもたぶんめちゃくちゃ優しい方だと思うし。私は傷つけられたままで終わりたくなくて、それでも世界が続くならの音楽から武器をもらって、それでまた闘いたいと思うんです。

【動画】「参加賞」のミュージックビデオ

篠塚:うん。傷つかないで生きてる人って見たことないし、別々の人間同士だから、意見が違うって、きっとすごく当たり前のことじゃない。どっちが悪いとかじゃないのに、自分と違う意見を言われただけで傷つくこともあって、わかり合えないっていうだけで胸が苦しくなることもある。にも関わらず、なんとなく俺たちって「傷つかないように生きていける」って前提を、無意識に思ってるんじゃないかなと思ったりもして。「自分と異なる意見がある」なんて当たり前のことなのに、まるでそれを覚悟してなかったかのように生きるから、怖がるから、僕らは必要以上に傷つくんじゃないかと思って。最初から、みんな無傷じゃ生きられない、それが僕らの闘いだと思う。

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