パンデミックの衝撃、アメリカは「集団的トラウマ」をどう乗り越えるのか?

ウイルスだけではない――パンデミックの中での生活は、永遠に消えない傷を社会に残すだろう (Photo by Steve Sanchez/Pacific Press/Shutterstock)



当事者意識の重要性

COVID-19のパンデミックと1918年のスペイン風邪には共通する点があるものの、1918年の集団的トラウマへの対応は、同時期に第一次大戦が勃発したことを考えると複雑だった、と語るのは、医学人類学者でジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生専門家、モニカ・ショック=スパナ博士。「スペイン風邪の影響が収まると、人々はある種の集団的健忘状態に陥りました」と言い、当時はまだ戦争の後遺症を社会全体で引きずっていた点を指摘した。アレクサンダー博士は、我々が今COVID-19パンデミックで体験しているものに最も近いのは1918年のスペイン風邪ではなく、大恐慌時代だと言う。「当時の人々は、アメリカ合衆国の資本主義と経済に並々ならぬ誇りを持っていました。それが全て崩壊したのです」と博士。「その結果、政府の役割が変わりました。労働組合、失業保険、社会保障の設立に、労働階級も含まれるようになりました」

このパンデミックが特に医療・経済的格差や不平等への注目を集めたことを見ると、収束後、理論的には当時と似たような改革が起きる可能性がある。ヒルシュベルガー博士は、収束するまでには重要な教訓を学べているだろう、と楽観視している。仮に今、数年前アフリカで発生したエボラ出血熱のような病気が大流行していたなら、我々は今よりも真剣にCOVID-19に向き合っていただろう。「同情心からではなく、現実のものとして、遠く離れた人の身に起きていることは自分たちの問題でもあると実感するでしょう」と博士は語る。同じ流れで、科学者たちが以前からパンデミックの可能性を警告して来たが、それを無視したツケが回って来ているのを受け、気候変動へもより真剣に関心が向けられるかもしれない。「私たちは互いに相関関係にあることを理解し、今は些細に見えるが、時間と共に少しずつ膨れ上がるような問題は危険で、手が付けられなくなるかもしれないと理解する――今回の一連の出来事から前向きな結果がもたらされるとすれば、こうした気づきだと思います」とヒルシュベルガー博士は言う。

集団的トラウマ――大恐慌やCOVID-19パンデミックなど――への対応の一環で、我々はその事件の被害者と加害者を特定し、納得出来るシナリオを作ろうとする。もちろんそうした作業は一筋縄ではいかない。例えば、アレクサンダー博士も指摘しているように、今回のパンデミックはマイノリティの人々の方が圧倒的に被害を受けているが、保守派はそうしたデータを無視し、全員が被害者だと言う問題としてしまう。

Translated by Akiko Kato

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