野田洋次郎が語る「新世界」の指針と覚悟

RADWIMPSの野田洋次郎(Courtesy of EMI Records)



延期になってしまったRADWIMPSのドーム・アリーナツアーについて

─武田くん(武田祐介:Ba)、桑原くん(桑原彰:Gt)はお元気でしょうか? どのような話をしていますか?

たまにテレビ電話で話したり、あとは曲を作っているのでそのやりとりが主です。二人とも小さい子供がいるのでおそらくいろいろな苦労がこの時期ある様子でした。


左から桑原(Gt)、野田、武田(Ba)(Courtesy of EMI Records)

─RADWIMPSのドーム・アリーナツアーが全公演、延期となってしまいました。現在の率直な思いと、また本来であれば2020年の春~初夏にかけてのこのツアーでRADWIMPSはどのようなことを表現したいと思っていたのか。延期公演の内容に抵触することもあると思いますので、可能な範囲でお聞きできればありがたいです。

1月から今回のツアーを作り始めました。武田と桑原は俺よりもずっと先に今回のツアーの音の仕込みから、新たなサポートドラマーのエノくん(エノマサフミ)への引き継ぎなど全力で取り組んでいました。僕は2月の頭から合流し、そこから1カ月半ほぼ毎日リハーサルを繰り返しました。悔しい気持ちでいっぱいです。デビュー15周年に突入することもありこのツアーを皮切りに、中国本土、北米、ヨーロッパ、アジアを回るワールドツアーを今年は予定していました。北米しかまだ発表していませんでしたが、各地昨年から調整を重ね、あとは発表のタイミングを待つだけでした。東京で五輪が開かれる前後、僕らは日本代表として世界各地で僕らの音楽を鳴らそう、と。正直3週間くらい前までは立ち直れないほどのショックでした。どこまで振り出しに戻るんだ、と。ドームツアーもそうですが、こう言ったワールドツアーは1年半とかそれ以上の時間をかけて準備します。ここに合わせてきた気力とモチベーション、スタッフの結束が無になるのが本当に悔しかったです。この2020年から良いも悪いも日本は変わると感じていました。その変化の一部に自分達もなるんだ、と。「こんにちは日本」というツアータイトルもそんな想いからつけました。ただCOVID-19は想像をはるかに超える変化でした。

でもやはり自分は音楽で自分自身のコントロールをしてきたんだなと改めて思いました。今は次に向かう曲を作ることで、気持ちが整ってきている気がします。

─洋次郎くん自身、「新型コロナウイルス前の世界」と「新型コロナウイルス後の世界」で決定的に変化したことがあればなんだと思いますか?

社会、国の仕組みそのものだと思います。何十年と「なんとなく続けてきたから、これでいいだろう」と惰性で進んできた仕組みが悲鳴をあげたということだと思います。

経済は膨張して力を増していく一方だと信じられてきたけどもう何年も頭打ち状態、そしてコロナによって結局ここまで脆弱なものだったということが証明されました。ウィルスにあざ笑われているように感じます。死にものぐるいで感染を食い止めるなら政府があらゆる補償策を打ち出して経済活動を仮死状態にする。企業や事業主が終息後に再開できる手立てを講じてこの状況を乗り越える必要があるけどそれができない。すでに倒産する会社が増えてきています。僕の周り、友人の中でも「いよいよヤバい」という人が数人います。さらに1カ月続けばどれだけの数になるか。個人事業主、中小企業。末端から切られていく。どこかで経済活動で命を危険に晒すか、ウイルスで命を危険に晒すか、個人が判断していくフェーズがくると思います。ここからは徐々に仕事に復帰する人も現れるでしょう。誰もその人を否定できません。そもそも自粛の「要請」なのですから。自分の命を自分で繋いでいくしかありません。スピードが遅い、決断ができない、道筋を作れない、国に救う力はないことが分かりました。

仮にワクチンができて、このウイルスとある程度の距離で共存できるようになったとして、今までのような世界には戻らないと思います。僕自身は国というものを信用しなくなりました。一切。一応この国に住むために税金は納めますが、(意識として)金輪際「国」というものから切り離した個体で生きようと思っています。要請や要望、税金の徴収、向こうからのリクエストはシコタマ飛んできますがこちらからの要望には応えない。まるで自分たちの財布の中身のように扱っていますが、税金はそもそも僕たちが支払ったお金です。それを国民が困窮している時に、国民が安心できるレベルまで補償として使わない道理がわかりません。僕はもう期待もしない。自分と、自分の大切なものは自分で守る。今はそういう気持ちです。

企業のあり方もたくさん変わると思います。良い気づきもあったのではないでしょうか。無駄な打ち合わせが減ったり。杓子定規に定時に出社したり、遅くまで会社で残業する必要性を考え直せるタイミングでもあります。

企業が一番変わるべきこと、考えるべきことは何より、リスクの分散です。一つの形態に絞ったやり方ではもう立ちゆかなくなることが痛いほどわかったのが今回の一件だと思います。致命傷を負った時、バックアッププランのような違う業態や仕組みを持っておく。それらを常に同時に走らせておく、ということがとても大事になってくると思います。

「消費が落ち込んで景気が上向かない」などといつも国は言っていろいろな手段で消費促進を促しますが、結局こういう緊急事態に救ってもらえないことがわかった今、これから余計に国民が貯蓄に回るのは間違いない気がします。

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