松田聖子、松本隆との史上最強コンビで描いた新たな女性像


1983年10月発売、13枚目のシングル『瞳はダイアモンド』。これも呉田軽穂であります。失恋ソングですね、私はもっと強いはずよっていうことを自分に言い聞かせているのが大人っぽいですね。一人で生きてきた自信がちょっとある女性の失恋の癒し方。初恋の失恋ではないんです、もっと精神的なダメージを知った女性に向けての失恋ソングですね。アルバム『Canary』には、松本さんが若い頃によくデートしていた横浜が舞台の「蒼いフォトグラフ」という曲も入っていますね。アルバムの最後の曲「Silvery Moonlight」はプロポーズを断る曲ですよ。今は一人で生きたいのという風にプロポーズを遠慮している。自分からちゃんと自分の人生を選んでいる、意志のある女性ですよ。もう少女ではないですね。この「瞳はダイアモンド」を聴きながら思ったんですが、「松田聖子の声って泣いてるんだよね」と言ったのは吉田拓郎さんでした。「明るいんだけど泣いているんだよ」と。泣いていますね。拓郎さんも、的確に松田聖子さんの声を言い当てていたなと改めて思いました。「瞳はダイアモンド」は連続13曲1位という記録になった歌であります。松本隆さんが聖子さんに詞を書くのは、1984年で一区切りがついてしまうんです。1984年2月発売のシングルをお聴きいただきます。「Rock’n Rouge」。



1984年2月発売のシングル『Rock’n Rouge』。アルバムは1984年6月発売の9枚目『Tinker Bell』。これは化粧品のCMソングだったんですね、「ピュアピュアリップス」というコピーがあった。「Kissはいやと言っても反対の意味よ」という女心が歌われていますね。これも呉田軽穂さんの曲です。松本隆さんの対談集が2冊出ているんですが、その中でユーミンと対談していまして。ユーミンは聖子さんの話をしながら、「松本さんは『Rock’n Rouge』の時に失踪したのよね」という話をしておりました。松本さんも「『Rock’n Rouge』の頃に"第一次やる気なくなる気"が来たんだよね」という風に語っておりました。でもこの1984年には、松本さんは大滝詠一さんのアルバム『EACH TIME』、南佳孝さんのアルバム『冒険王』を作っているわけで、聖子さんは1983年にコンサートツアーを3回、主演映画『プルメリアの伝説 天国のキッス』にも出ている。1984年にはツアーを4回やっている。そんな中で皆が120%ギリギリの力で、失踪していたという2年間なんでしょうね。そんな中で転機が来たのが1984年でした。

Rolling Stone Japan 編集部

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