松田聖子、松本隆との史上最強コンビで描いた新たな女性像

先週、「小麦色のマーメイド」を聴いていて、ふっと思いつきました。松田聖子は1980年代の女性版若大将である。これ自分で気に入っているんです(笑)。今日もそういう話をするかもしれません。40年間彼女は何を歌ってきたのか? 彼女の功績とは? 今月は私一人でお送りします。4週間、40周年、40曲。今週はまずこちらの曲です、1982年10月発売、「野ばらのエチュード」。



1982年10月発売、11枚目のシングル『野ばらのエチュード』。作曲は財津和夫さんです。松田聖子さんは1962年3月生まれなので、ちょうど20才の時の曲です。「ひとり静かに愛を見つめて 20才のエチュード」、「よろこびも哀しみも20才なりに知ったけれど」という歌詞ですね。歌詞の中に20才という言葉が2度も登場しているわけですね。聖子さんはこの歌を大人っぽいと思ったのかな? でも自分の歌にしていますね。自分の歌にしてしまう歌唱力、懐の深さ、声の素晴らしさ。これも今週たっぷりお楽しみいただけたらと思います。



この曲は作曲が細野晴臣さんなんですね。曲の感じは大滝詠一さんのようで、歌詞は松本隆さんです。6枚目のアルバム『Candy』の中の「ブルージュの瞳」。ブルージュというのは、ベルギーの古都の名前。ヨーロッパ一人旅ソング。アルバム『Candy』の中には、細野さんがこの曲と「黄色いカーディガン」の2曲に参加しております。他には大滝詠一さん、財津和夫さん、南佳孝さん、大村雅朗さんが曲を書いておられます。今お聴き頂いている曲のアレンジが大村雅朗さん。このアルバムで細野さん、松本さん、大滝さんというはっぴぃえんどの3人が揃ったので、そのことを表したのかなと思ったりしますね。彼はもう亡くなってしまいましたが、そういう意図があったんではないでしょうか。それぞれの1980年代の迎え方というのがありました。大滝さんは1981年に『ア・ロング・バケーション』で爆発的に世間に知られました。南佳孝さんは1981年に『スローなブギにしてくれ (I want you)』を大ヒットさせました。南佳孝さんのデビューアルバム『摩天楼のヒロイン』は松本隆さんの初めてのプロデュース作品でした。そしてYMOは1981年に全世界で500万枚を売るという大成功、絶頂ですね。1982年はYMOとしてはちょっとお休みしていた。坂本龍一さんは『い・け・な・いルージュマジック』をやったり、細野さんが『ハイスクールララバイ』で歌謡曲をやってみたり。そういう流れの中でこの曲もありました。1970年代にあった、ニュー・ミュージックやロック、フォークと芸能界の境界がなくなってきた。そこに橋を架けたのが松本さんで、その橋を皆が渡り、松田聖子さんで皆が共闘を組んだということになりますね。この「ブルージュの瞳」はヨーロッパの一人旅ソングですけど、松本さんが書いた20才の松田聖子は、「野ばらのエチュード」もそうですが、ちょっと大人になってます。次の曲はその代表と言えるでしょう。

Rolling Stone Japan 編集部

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