リトル・リチャードはなぜ偉大なのか? レノン、ディラン、ボウイも愛した反逆児の功績

「制御不能なエゴ」と「自由の雄たけび」

その後、リトル・リチャードはトーク番組の常連となった。事あるごとに、ジョニー・カーソンやディック・カベットを相手に、いまも自分が偉大で、ハンサムで、ジョージアの誇り、鋼のリベラーチェであるかを豪語した。自分が元祖であることを世に知らしめることが大好きだったが、同時に後継者たちにも称賛を送っていた。「ああ、プリンスは大好きだ」と、1990年に語っている。「マイケル・ジャクソンも好きだし、ボン・ジョヴィも好きだ。ブルース・スプリングスティーンもいい。みんな好きだよ」ジョン・ウォーターズ監督は映画『ピンク・フラミンゴ』で、「The Girl Can’t Help It」を印象的に使っている



1988年のグラミー賞で、授賞式側は愚かにも最優秀新人賞のプレゼンターを彼に依頼した。TVの生放送でリトル・リチャードにマイクを渡すことは、アナーキーに印籠を渡すに等しいこととは知らずに。彼は期待通り長々と説教を垂れ、賞の授与を拒んだ。「最優秀新人賞は……俺! 俺は今までひとつも賞ももらってない! お前たちは俺にグラミーをよこさなかったじゃないか、何年もずっと歌ってるってのに! 俺がロックンロールを作ったんだぞ!」観客も始めのうちは喜んだ――「ああ、やっぱり彼だ!」――だが、次第にこの男が本気であることに気が付いた。彼は封筒の中身を読む気も、誰かにスポットライトを譲る気もさらさらなかった。共にプレゼンターを務めたデヴィッド・ヨハンセンは困り果てたように立ち尽くしていた(可哀そうなテレンス・トレント・ダービーは、他のプレゼンターと同じように、自分の名前が呼ばれるかもしれないと期待しながら舞台袖で待機していた。結局、受賞者はジョディ・ワトリーだった)。

リトル・リチャードは手の付けられないほどクレイジーなロックンロールの精神を、お前はクズだと言われ続けた少年の声を体現し、自分こそがすべてだと世間に轟かせた。だからこそ、「リップ・イット・アップ」「トゥッティ・フルッティ」「女はそれを我慢できない」はいまも我々を圧倒する。だからこそ、「A-wop bop-a-loo-bop」は今も自由の雄たけびとして鳴り響く。だからこそ、世界はこの男を永遠に愛し、記憶に刻み続けるだろう。

Translated by Akiko Kato

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