ニューヨークでは大麻の闇市が繁盛「おかげで正気を保てている」

2020年4月14日、ブルックリンはブッシュウィックで大麻を楽しむ喫煙者(Photo by Bruce Bennett/Getty Images)

アメリカの各州で大麻合法化の流れが進む中、ニューヨークは2年連続で合法化に至らなかった。それでもニューヨーカーたちは大量のマリファナを吸い続けている。

2019年のある研究によると、130万人のニューヨーカーが過去1年以内に大麻を使用したと言い、新型コロナウイルスのパンデミック中は消費量が急増している。パンデミックの中心地で暮らしている多くの人々にとって大麻は必要不可欠だ。「もしボングに住めるなら今すぐ入るわ」とウエスト・ヴィレッジ在住の大麻常用者、キャロラインさんは言う。「うちからすぐのところに冷蔵車の死体安置所があるのよ。大麻のおかげで正気を保てているわ」

・コロナ禍でもマリファナは「生活必需品」、米国で売り上げ急増

我々が取材した闇市の売人によると、パンデミック中の商売は繁盛していると言う。売買はマスクと手袋着用の元、または郵便受けでの取引を行なっている――客が封筒に現金を入れ、配達されるのを信じて待つというものだ。ニューヨークの顧客たちは質の高い大麻が自宅まで届けられるというサービスに、割増料金を支払うことに慣れているため商売はうまくいっていると、匿名という条件でローリングストーン誌の取材に応えた売人のラリー(仮名)は言う。

ラリーはブロンクス郊外に拠点を置いているが、大麻を育て始めたのは90年代。マンハッタン中心部のピザ屋の上で、ピザ窯の排気口を使い花の匂いを隠していた。その頃はストロベリーコフなどの売れ筋なら1ポンド6000ドル(約64万円)で売れていたが、合法化している州から質の高く、安いものが大量に闇市に入って来る今、相場は1ポンド当たり2000ドル(約21万円)以下まで下落してしまった。市場が飽和状態であるにもかかわらず、4分の1オンス当たりの値段はパンデミック中でも変わらず100ドル(約1万1000円)だ。

ラリーは質の高い大麻には金を惜しまない常連のおかげでどうにか商売を続けられている。配達はバイクで回り、パンデミック中は感染防止のため、ヘルメットと手袋をして荷物を手渡している。「1オンス400ドル(約4万4000円)で売れるよ」と彼は言う。「俺の客は家庭を持っている人が多いな。70代の女性客が2人いるが、俺からしか買わない。金には困ってないからクスリにちょっと使っても気にしないんだ」。パンデミック中に自宅待機している顧客たちは普段より大麻の消費量が増えている。ラリーによると「今まで3週間に一度買ってた男は10日に一回呼ぶようになったよ」

オレゴンやカリフォルニアからの大麻が大量にニューヨークの闇市に流れ込むに連れ、供給が需要を追い抜いていったと、コニーアイランドのロシア人の売人、ジョニー(ファーストネームのみ明かした)は言う。しかし、パンデミックの打撃を受けた人々が生活のためにマリファナを売っているのを彼は見ている。「みんな母親と一緒に売人をやってる」とジョニーは言う。「俺の客もみんな副業で売ってるよ」

パンデミックの最中、宅配に頼っていた一部の消費者は別の入手方法を探さなくてはいけなくなっている。ウィリアムズバーグ在住のアンドリュー・トーマスさんは、住んでいる海岸沿いの高層マンションが配達物は受付係が預からなければいけないと定めたため、普段の業者から買えなくなってしまった。「いつも買ってた人が直接届けに来れなくなったから、友達の家に届けてもらってるんだ」と彼。

ある宅配業者は「自宅待機サバイバルキット」と題し、大麻入りブラウニー2つ、THC入りグミ1パック、乾燥大麻3.5グラムと巻き紙が入ったセットを販売した。ネットで注文を受け付け、指定された日時にポストに届けている。「投函したらメールが来るから、接触は一切ないのよ」と普段はマンハッタンの友人から大麻を買っているジョーダンさんは言う。「街まで買いに行くのは論外。彼氏が前に買いに行ったとき、すごく不安になってた――出入りしてる人がいっぱいいて、咳をしてる人もいたって」。肺を労り、摂取量を調節するため、今は大麻入り食品を愛用している。「この状況だから、キマり過ぎると良くないの」

ウエスト・ヴィレッジで、キャロラインさんはジョアン・クレイボーンという名で通っている大麻入り食品を作っている人から菓子を購入している。ジョアンはブルックリンでヴィーガンやグルテンフリーの大麻入り食品を作っており、市内ならどこでも自転車で、マスクと手袋をつけて配達している。50ド(約5400円)ドルで大麻入りグミを20個、ピーナッツバターカップ6つ、もしくはペパーミント・パティー6つを家まで届けてもらえる――「街で一番おいしくてディープな大麻入り食品」とジョアンは豪語している。友人や口コミのおかげで、始めたばかりのサービスでパンデミックを乗り越えられている。「みんな私の名前を広めて支持してくれて、本当に優しいの」

Translated by Mika Uchibori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE