Kan Sanoが語るコロナ時代の表現と暮らし「音楽と生活、政治が地続きなのは間違いない」

インスタが「オマケ」から「主戦場」へ

―ライブが中止になり始めたりしてから、Sanoさんがどういう状況だったかを聞かせてもらえますか?

Sano:現状最後にライブしたのが、2月22日の『BIG ROMANTIC JAZZ FESTIVAL 2020』。その頃、海外ではコロナのニュースがいっぱい出ていたけど、日本はそこまでなかったし、僕も大丈夫だろうと甘く見ていました。その時はCharaさんと一緒に演奏する予定だったんですけど、最終的には入場時に全員の体温を測って、お客さんにマスクを着けてもらって開催されました。その後、3月のライブは全部キャンセルになって、3月末に予定していた自主企画「counterpoint #01」も延期して(12月17日に振替公演を予定 )。3月頭の時点ではライブをやるつもりでいたので、今思うと考え方が甘かったですけど、その頃は割とそういうムードだったんですよね。だから徐々に気付き始めたっていうか。

―2月22日のことは僕も覚えていて。その辺りを境に公演延期/中止の流れが一気に進んでいきましたよね。

Sano:そうそう、超ギリギリでした。

―ライブが中止になってからは、どんなことをやってました?

Sano:もともとライブの本数自体はそんなに多くなかったし、基本は家で仕事をしているので、やることはそんなに変わってなくて。家でずっと制作してましたけど、徐々に人と会い辛くなっていって、お互い探り合うような感じになりましたね。「僕は会ってもいいと思ってるけど、あなたはどう?」みたいな。



―もともと自宅に籠って地道に作るタイプだから、仕事としてはそこまで大きな変化がなかったわけですか。

Sano:僕は引き籠ってるのは平気な方で、むしろ好きなんですけど、ライブをやったり、カフェに行ったり、そうやって外に出ることが気分転換になっていたので、息抜きができなくなっちゃったのは困ったところで。だから、一日一回は散歩したり外の空気を吸うようにしているけど……最近はSNSはギスギスしていますしね。僕は発信する側だし、SNSも仕事としてやっているので、そこでも気分転換ができない。

―SNSでは告知や宣伝もやりづらい雰囲気ですよね。

Sano:ライブを夏以降にリスケするにしても、それが無事開催できるのかどうかもわからないし。今、告知したところでお客さんも決めづらいでしょうしね。難しいところです。

―SanoさんはLast Electroってバンドを組んだり、近年はアクティブに動いてる印象ですけど、バークリーに留学してた頃やその後の数年は引き籠ってたわけで、その頃に戻ったような感覚もあります?

Sano:そうですね、僕はがっつり引き籠りタイプ。でも、制作だけが続いてるとそれはそれでしんどくなっちゃうんですよ。ライブだけが続いても嫌になっちゃうんですけど(苦笑)。両方やることでバランスを取っていて、精神衛生的にも良かったんですけど、それが崩されちゃった感じはありますよね。



―こういう状況になって、ライブをやることの意味を改めて感じたりしますか?

Sano:それはあります。インスタライブをやったり、オンライン・フェスに出演したりもしてますけど、やっぱり実際のライブとは違うので。早くライブやりたいですね。

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―その一方でSanoさんはコロナ以前からインスタに演奏動画を上げたり、インスタライブやったり、そういったことを定期的にやってきたアーティストでもありますよね。そして、コロナ以降も日々やっている。それは「いつも通り続けてる」という感覚ですか?

Sano:いやいや、更新の頻度は上がっていると思います。それに(コロナ以降で)インスタのアクセス数がすごく増えたんですよね。みんな娯楽を求めているんだなって。そこで僕に何ができるかっていうと、インスタやYouTubeだったり、そういうものなのかなと。これまではライブハウスでやる現場のライブが主軸にあって、インスタライブはその入門編というか、オマケというか、あくまで現場に来てもらうためのきっかけ作りとしてやってたんですけど、今はインスタがメインになってきている感覚ですね。

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