コロナ禍でも美容整形はやめられない、危険なセルフ施術に手を出す者も

(Photo by Cultura RF/Getty Images)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による自宅待機命令中も、アメリカの一部のスパやクリニックはインフルエンサーに割引価格でボトックス注射や注入施術を提供中。なかにはセルフ施術という危険な橋を渡る者もいる。

「両頬に1本ずつ、それと顎に1本注射してもらってるんだ」とマーカスは言う。「それともう1本、目の下にも打ってもらおうかなと思ってる。まだ決めてないけど。それからもちろんボトックスも。ボトックスは欠かせない」

28歳のマーカス(スポンサーやビジネスパートナーからの報復を恐れ、仮名を希望)が話しているのは、米カリフォルニア州ハンティントンビーチにある美容医療スパ「Image Center」での施術のこと。ギャビン・ニューサム州知事が州の自宅退避命令の継続を発表したばかりだというのに、5月4日に予約を入れている。先月、自宅退避命令が出される数日前にはロサンゼルスのコリアンタウンでヴァンパイア・フェイシャルを受けた。自分の血液から採取した多血小板血漿(PRP)を顔中に塗りたくるという美容法だ。

・自宅待機命令を破って韓国に渡航、美容整形を敢行したYouTuberも(動画)

マーカスの話を聞いた限りでは、この時期にここまで危険を冒して施術を受ける理由は単なる虚栄心ではない。彼はそれなりに名の知れたYouTuberで――彼のメインチャンネルの登録者は約4万人――こんな時期でも若々しい外見を保つのはプロとしての義務だと感じている。「自意識過剰だと思うかもしれないけど、僕はYouTuberとして、生活のためにカメラの前に立っているんだ」と本人。それよりも注目すべきは、アメリカ全土で不要不急の仕事のほとんどが営業を停止しているときに、自分の希望を喜んで叶えてくれるところがいとも簡単に見つかったという点ではないだろうか。

「(都市封鎖中はLAの)どこのオフィスに電話しても、『リップフィラーの注射をお願いします』と言ったところで『休業中です』って言われて終わりだと思う」と彼は言う。「でも常連客とかセレブリティーとか、インフルエンサーや俳優で金さえあれば、向こうも『どうぞお待ちしています』ってなると思うよ」

リップフィラーやボトックスは注射療法と呼ばれる美容外科背術で、ふっくらした頬とぽってりした唇が特徴のインスタ顔(すなわちカイリー・ジェンナー顔)の人気により、近年爆発的にヒットしている。特にニューヨークなどの感染者の多い都市のほとんどのクリニックやスパは店を閉め、こうした不要不急の施術をキャンセルした。「注射をするときは患者の顔が目の前にあります。患者はこちらに話しかけてきますし、マスクを着用していただくこともできません」と言うのは、アッパー・イースト・サイドの美容皮膚科医のミシェル・グリーン医師。彼女のクリニックは3月13日から休業中だ。「ソーシャル・ディスタンシングなんてとても無理です」

だが国全体が封鎖され、ほとんどの不要不急の仕事が休業し、その結果失業率が跳ね上がっている中、国内各地のスパやクリニックは営業を続け、懐が暖かい人や大量のフォロワー数を抱える人に美容施術を提供している。

Translated by Akiko Kato

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