SKY-HIインタビュー「思慮深く前向き、気楽にネガティブ」

「まずクリエイションに集中して、没頭することで、余計なことを一回考えなくなる」

―3月上旬だと、まだ「いつ終わるんだろう?」「いつ元に戻るんだろう?」みたいな考え方だったけど、「#Homesession」で〈あの頃には戻らない けど生きてるなら終わらない〉と歌われているように、「変わっていくことを受け入れて、その上で何をやっていくか」に発想を切り替えることで、クリエイティブな方向に舵を切ることができたのかなって。

SKY-HI:あ、そこは順番が逆かもしれないです。まずクリエイションに集中して、没頭することで、余計なことを一回考えなくなるんですよね。思考がクリーンになるというか、マインドが健康になるというか、そこからやっといろんなことが考えられるようになる、っていう順番だったと思います。例えば、「新型コロナに負けるな」とか「この危機を乗り越えよう」とか「早く日常に戻れるように」とか、一見前向きな言葉が全然刺さらなかったんですよ。かといって、後ろ向きな言葉に飲まれたままだと、何もできなくなっちゃう。

―たしかに。

SKY-HI:実際3月のアタマくらいに2日間何もしない日があったりしたけど、でもやっぱり何もしないとどんどんダメになるから、これはあかんと。でも、幸いなことにやらなきゃいけないことが、ベストアルバムの録り直しが……自分が「やりたい」って言ったことなんですけど(笑)、それで迷惑かけるわけにもいかないから、とにかく没頭して。そうしたら、少し霧が晴れてきたんですよね。「もう戻らないんだな」って思うようになったし、「早く前みたいに幸せな日常を」みたいな言葉に対しても、「いやいや、新型コロナ以前もそんなに幸せだったっけ?」みたいな(笑)。

―ははは(笑)。

SKY-HI:そういう諸々がフラットに見えるようになってきた中で、「THE SUPER FLYERS元気かな?」と思って、LINEしたら、みんな大変そうで、「とりあえず曲作って、セッションする?」みたいな、シンプルな喜びに戻れたっていうか。で、それを作って行くと、今度はFukaseくんから連絡が来たり、『スッキリ』から話が来たり、いろいろくっついてくっついてって感じですね。変に前向きになることでも、問題点に目を向けることでもなく、まずは何が自分にとってのフラットな状態を見つけることが大事だった気がするかな。

―「#Homesession」のステムデータを配布して、誰でもセッションに参加できるようにしたのは、星野源さんの「うちで踊ろう」や、origami PRODUCTIONSの「origami Home Sessions」からの影響もあったわけですよね。「#Homesession」には〈オリガミ付きのスキルはサビつかない〉というパンチラインもありますし。

SKY-HI:源さんはこの状況におけるポップスターのあるべき形だったと思うし、origami PRODUCTIONSの対馬(芳昭)さんは音楽関係者にできる最大のアプローチをしたと思っていて、なおかつ、作品がどっちも良かった。当たり前に思うかもしれないけど、あらためてそれは本当に大切なことだと思います。で、「うちで踊ろう」には結果乗っからせてもらったんですけど、その前に自分で一曲書いとかないとなって気がしたんですよね。それをやらないと前に進めないというか、「マジで今の曲」っていうのを書いておかないと、何もできない気がして。なので、まずはその曲を書いて、さっきも言ったように、バンドのメンバーに「よう、元気?」っていう(笑)。

―誰でもセッションに参加できるようにしたことは、何か意図がありましたか?

SKY-HI:大事にしたのは、「俺は俺で好きにやるから、みんなはみんなで好きにやって」っていうこと。ひとつのムーブメントが流行ったときの集団意識みたいなものって、強力じゃないですか?

―良くも悪くも、ですよね。

SKY-HI:そう、いい方向にも悪い方向にも強力だから、バッファがいろいろあるっていうのが一番健康的な気がしたんだよなあ。でも、「#Homesession」はあんなにみんなやってくれるとは思ってなかったんですよ。バンドでやるために、ステム書き出して送んなきゃだし、せっかくだから、「家にいる時間長いし、楽器やろうかな」みたいな人とか、暇になっちゃったビートメーカーとか、そういう人が何人かやってくれたらな、くらいに思ってて。でも、「あの人が」みたいな人も乗っかってくれて、嬉しかったし、楽しかった。

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