『攻殻機動隊』が世界・アニメ・サブカルチャーに与えた影響とは?

最新作『攻殻機動隊 SAC_2045』は、過去作品を凌駕するこれまた衝撃作だ。映像には『攻殻機動隊』史上初のフル3DCGアニメーションを採用。先述の通り、『攻殻S.A.C.』シリーズ生みの親である神山健治はもちろん、『攻殻機動隊』同様に士郎正宗原作のアニメ映画『APPLESEED』を手掛けた荒牧伸志も監督として名を連ねる。キャストには、草薙素子役に田中敦子、荒巻大輔役に阪 脩(89歳での熱演!)、バトー役に大塚明夫、トグサ役に山寺宏一など攻殻フリークにとってはお馴染みのオールスターチーム。

Netflixで配信されるや、再生ランキングで連日1位を記録しているが、それもそのはず、この作品は『攻殻機動隊』全シリーズの中で、現代社会とそこに生きる現代人との距離を最も縮めた作品だからだ。近い将来に「有り得る」と誰もが想像できる世界。世界経済が壊滅し、計画的かつ持続可能な戦争時代に突入。それに伴い、驚異的な知能と身体能力を持つ存在が現れ、各所で不可解な事件が勃発。その中には、SNS社会で不特定多数のユーザーから悪と評価された人物を集団リンチ、実際に絶命させてしまうシステムも登場する。新型コロナの蔓延、緊急事態宣言後に問題視されている「ジャスティスハラスメント」が人を物理的に破壊できてしまう未来。その描写は社会風刺に終わらず「何故そんな殺人テクノロジーを人間は生んでしまったのか」まで深堀りされていく。

なお、今作は視聴者から「初心者向け」「過去最も分かり易い」などの感想もよく記されているが、それはきっともう時間がないからだろう。かつては遠い未来を描いていた『攻殻機動隊』シリーズだが、その未来は限りなく現実に近付いている。SFとして描いた犯罪や危機がもう「有り得る」世界に到達しつつある。『攻殻機動隊』製作陣や公安9課の面々がアニメを通して鳴らし続けてきた警鐘は、今確実に万人に響かせなくてはならなくなった。そう捉えると、今回の最新作『攻殻機動隊 SAC_2045』は、現実世界を生きる者たちへの最終通告なのかもしれない。どんなにテクノロジーが発達しても、それを良くも悪くもコントロールするのは人間。それを学ぶには、今や日本が世界中に誇る文化となったジャパニメーション、その金字塔である『攻殻機動隊』が適任と言えるだろう。

テキスト:平賀哲雄

◎au 5G × 攻殻機動隊 SAC_2045 "UNLIMITED REALITY" 公式サイト
https://shibuya5g.org/article/house-contents-shibuyakokaku/

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