自分の主張をするためのアサーション 人の発言を封じるトーンポリシング

何かを主張する行動は、次の3つに分類することができます。1つ目は「受身的行動」です。これは言いたいことがあってもそれを我慢し、相手の言いなりになる行動です。自分の本当の主張は達成できず、不満が残ります。2つ目は「攻撃的行動」です。これは、相手を無視して自分の主張を強引に通す行動です。自分の目的は達成されますが、相手は傷ついたり、不満や怒りを抱いたりして、場合によっては報復されることもあり得ます。そして、3つ目が「主張的行動」です。これがアサーションにあたります。ここでは、相手の権利や立場を尊重しながら、自分の言いたいことを率直に表現します。この場合、自分も相手も傷つけず、自分の目的も達成できます。このときポイントとなるのは「相手の行動を直接責めない」「自分はこのように思うと伝える」「相手が反発する否定的な言葉でなく、肯定的な言葉を使う」ことです。そして「私」を主語にして話します。「あなた」を主語にすると、否定的に受け取られやすいのです。たとえば「あなたは間違っている」ではなく「私の考えは、あなたの考えとは違っています」だったり、「あなたはどうしていつも○○の提出が遅いんだ」ではなく「私は、あなたが早く出来上がると助かります」などといった形です。

このアサーションの考えと行動は、以前も取り上げた公民権運動にはじまります。アフリカ系アメリカ人も白人と同じ権利を持って良いという主張は、それ自体は白人を否定するものではありません。当時全米でアフリカ系アメリカ人は全人口の10数%程度でしたので、自分たちの主張を通すためには多数派の白人たちが動くことが必要でしたが、アサーションの考え方による意見表明によって、運動の支持拡大ができたのです。公民権運動の歌としても有名なサム・クックの「A Change Is Gonna Come」の歌詞も、「私は信じている、私に変化が訪れる」と、「私」を主語にしながら自分の主張を明確に表現していて、アサーション的なものに聴こえます。


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