辰巳JUNKが解説、今日のポップカルチャーを知るための25の新常識

左からビヨンセ、テイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュ(Photo by Larry Busacca/Getty Images for Coachella, Carrie Davenport/TAS/Getty Images for TAS, Mat Hayward/Getty Images)


13.
Political Chaos
政治混乱


海外ニュースに親しんでいる人ならば、「分断」という言葉を一度は聞いたことがあるだろう。2016年アメリカ大統領選挙において、共和党ドナルド・トランプの勝利は世界的なサプライズだった。二大政党員の「分断」が注目を集めたアメリカに限っても、2010年代後半は、まさに政治混乱がポップカルチャーにまで影を落とした時勢かもしれない。国民的行事スーパーボウルのハーフタイムショーにおいては、2016年、ビヨンセのブラックパンサー党トリビュートが大騒動となり、警官や保安官による反対デモ行進に発展した。2019年には、NFL自体「国歌起立拒否」問題で社会を二分していたため、マルーン5が同ショーでのパフォーマンスを決定しただけで批判を呼ぶ憂き目に遭っている。




14.
Mental Health
メンタルヘルス


メンタルヘルスは、2010年代アメリカのユース・カルチャーを代表するテーマとなった。2017年に大ヒットしたNetflixのティーン・ドラマ『13の理由』は、女子高生の自殺から始まり、その少女がいかにして精神を痛めていったかを刻々と描写する内容なのだから恐れ入る。ディケイド・ラストにトップスター入りしたビリー・アイリッシュにしても、彼女と近いSoundCloudラップ・コミュニティにしても、希死念慮や苦しみ、自死を描く作風が若者の心を掴んでいる。不安が大きい時代、言い換えれば憂鬱をシェアしやすくなった時代、「セルフケア」もまた大きな注目を浴びた。アリアナ・グランデが元恋人たちに宛てた「thank u,next」を聴こう。そこには、自分を慈しみ前進せんとする時代精神がある。




15.
Economic Inequality
経済格差


世界金融危機を経てから突入した2010年代、第四波フェミニズムや共和党ドナルド・トランプ当選を経て「経済格差」問題はより存在感を強めていった。平均的な豊かさが減り負債は増えたアメリカのミレニアル世代において、社会主義思想の支持率が上がる調査も少なくない。苦境の影はポップ・カルチャーにも及ぶ。2016年に大ヒットしたチェインスモーカーズとホールジーの「Closer」は甘いバラードと見せかけてカップル間経済格差の曲だ。特権階級の美しき白人はすっかり憧れの対象から定番の悪役となり、2018年には「登場人物全員リッチでクズ」が売りのダーク・コメディ・ドラマ『サクセッション(キング・オブ・メディア)』がヒットした。




16.
Genre-Fluid
ジャンル融解


「テクノロジーが音楽を民主化している」と断言したのはグライムスだが、事実、この10年は技術の発達によってさまざまな「当たり前」が崩壊していった。代わりに台頭したもののひとつは「越境」だ。音楽でいえば、ジャンル境界の融解が進みに進んだ。たとえば、ラッパーとして知名度を築いたポスト・マローンは、2018年グラミー賞にてポップ部門アクトに計上されて騒ぎになった。歌唱が多く、フォークやカントリー色も混ざり合う彼の音楽に既存ジャンルを適用するのは難しいのかもしれない。翌年、同アワードで最優秀新人賞ノミネートを果たした21世紀生まれのビリー・アイリッシュは、ジャンル流動アクトと呼ばれることについて新世代らしい反応をとった。「“ジャンルわけ”ってやつに耐えられない!それがある時に生まれなくて良かった!」

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