辰巳JUNKが解説、今日のポップカルチャーを知るための25の新常識

左からビヨンセ、テイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュ(Photo by Larry Busacca/Getty Images for Coachella, Carrie Davenport/TAS/Getty Images for TAS, Mat Hayward/Getty Images)


5.
Cancel Culture
キャンセル・カルチャー


SNSはさまざまな人に「声」と「力」を与えた。その結果、有名人や企業の発信が批判を呼んで表舞台から降ろされる「炎上」案件は今や日常茶飯事である。同性愛差別的な過去のツイートが騒動となり、アカデミー賞の司会を辞退したケヴィン・ハートなど、枚挙にいとまがない。当然、こうした「キャンセル・カルチャー」への問題視も進む。2019年末には、リベラルな社会正義的価値観による「キャンセル」への反発がセレブリティたちからも飛び出すようになった。とくに、トランプ支持を公言して以来、民主党への批判が増えたカニエ・ウェストは辛辣だ。「社会正義に目覚めたと思ってる奴らは、それっぽいルールに従属してるだけだ。ヒップホップはルールに従うものじゃない」


6.
Changing Media Landscape
メディア交代劇


SNSで意見を発しやすくなった人物にはセレブリティも入る。InstagramやTwitterといったプラットフォームは、ファンとの交流場というだけでなく、彼ら自身がコントロールするオウン・メディアとして重要な役割を果たすようになったのだ。かつて有名人が報道に異を唱える際は、有名メディアを通してステートメントを発表していたが、今なら瞬時に反論ポストができる。この地殻変動によってパワーを低下させた存在がマス・メディアとされる。妊娠報告から新作予告まで、スターたち自身のSNS投稿を転載するかたちで後追い報道するスタイルが常態化した。ビヨンセやテイラー・スウィフトなど、インタビューを承認せず自ら記事編集するかたちで有名メディアに出演するスターも増えたため「ジャーナリズムの衰退」を危惧する声も出ている。

7.
Streaming Services
ストリーミング・サービス



マーティン・スコセッシ監督の言葉を借りれば「新たなる第一デリバリー・システム」となったストリーミング・サービスは、ポップカルチャーのルール自体を書き換えてしまった。「何枚買われたか」ではなく「何回聴かれたか」が重要となったポピュラー音楽領域では、柔軟なリリースがすっかり定着。リル・ウージー・ヴァート「XO Tour Llif3」のように、アーティスト本人やレーベルすら売り出す気はなかった曲がユーザーによって押し上げられる予測不能型ヒットも多発した。ストリーミング王ドレイクが2015年にサプライズ・ドロップしたミックステープのタイトルは旧巣に向けたものだが、高速で変化しつづける時代にも相応しい。『If You’re Reading This It’s Too Late』、「お前がこれを読んでいるとしたら、すでに遅すぎる」。



8.
Artists’ Rights
アーティストの権利


2010年代を代表するシンガー・ソングライターであるテイラー・スウィフトは、そのキャリアを闘争に捧げてきたとも言える。元カレたちや宿敵カニエ・ウェスト、はたまた「Bad Blood」を捧げたケイティ・ペリーとのバトルが有名だろう。しかし、その一方で「アーティストの権利」問題に取り組み続けた存在でもある。『1989』シーズンには「音楽は無料であってはならない」として、ロイヤリティ支払い方式に意義を唱えるかたちでSpotifyより撤退。また、レーベルを移籍したのちは、過去作の権利をミュージシャン自らが保有できない状況や、未成年のころ不平等な契約を結ばされる業界の問題を訴えた。企業のバックアップなしに大成する若手アクトが増えた今、「アーティストの権利」問題の提起はより活発になっていくだろう。


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