過酷なICU勤務、生配信の音楽イベントがストレス解消に

スティーヴン・ウィンネット(Courtesy of Steven Winnett)

米ニューヨーク市内の病院の集中治療室(ICU)で働くスティーヴン・ウィンネットは30歳の看護麻酔師。音楽イベントが大好きな彼は、DJやアーティストの生配信をキュレーションして紹介するサイト「All Day I Stream」を友人と一緒に作り、視聴者たちが一緒に踊ったり楽しんだりできるようにZoomでつながるパーティースタイルを提案。激務の疲れを癒す大切な場所になっているという。

ウィンネットはマイアミ出身で、昨年12月にフロリダ国際大学で看護師の学位であるDoctor of Nursing Practice(麻酔学)を修得後、ニューヨーク市内の病院で麻酔専門看護師として職に就いた。

当初、夜と週末は仕事がなくて好きなこと、つまり音楽のライブやDJイベントを観に行く予定だった。実際、ウィンネットがお金を使うのは食べ物とコンサートだけで、これまでコーチェラからEDCヨーロッパまで世界中のフェスティバルにも参加してきたという。

しかしウィンネットが病院勤務を始めたのは3月2日。ニューヨーク州での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急激な感染拡大を受けて州知事アンドリュー・クオモが緊急事態宣言を出す5日前のことだった。そして3月16日に、クオモ知事はバー、レストラン等の不要不急のサービス(ニューヨークをニューヨークたらしめる全業種とも言う)の閉鎖を開始した。するとウィンネットには、当初担当する予定だった仕事は保留され、その代わりにICUで重篤な新型コロナウイルス感染者のケアをするようにと通達された。

「夜勤は日勤とは全く異なる仕事なんだ。だって常に肉体面での疲労と闘う状態になるからね。精神的にも消耗して、精神面でも常に疲労と闘うことになる。それにあの状態の患者たちは……見ていてつらい光景だから、隔離生活のストレスだけじゃなくて仕事のストレスでも葛藤していたんだ。ほんと、逃げ場がまったく無いって状態だね」

ウィンネットが言う通り、彼の仕事は非常に過酷で、マイアミで培われた太陽のような気質まで試された。仕事場に向かう途中で泣いたこともあると言う。職場のスタッフ全員が常に頭の先から爪先まで防護服で隠れているため、一緒に働いている人たちの顔もよく知らないと語る彼の声は震えていた。

「ICUにいるから、僕がケアする新型コロナウイルス感染者は最も危険な状態だ。みんな呼吸器につながれていて完全な鎮静状態で、医療機器で生かし続けているという患者だけ。以前にもICUで仕事をしたことがあったし、亡くなる人もたくさん見てきた。とても悲しい出来事も見てきた。心が張り裂けそうな様子も見てきた。でも、ICUが患者で溢れていて、その患者がほぼ同じ道をたどるなんていうのは初めてだよ。ウイルスが増殖して、みんな意識を失い、悪化する。回復する可能性は非常に低い」

Translated by Miki Nakayama

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