新型コロナウイルス影響下での日々、これからの音楽はどうなる?

みのミュージック(Courtesy of UUUM)

「みのミュージックの令和ロック談義」第4回。新型コロナウイルスは史上初のサウンドトラックを伴ったパンデミックとなる(かもしれない)。

先が見えないウイルスとの戦いの中、息の詰まるような生活を強いられている方が大多数だと思われる。筆者は殆どの時間を日々音楽制作に投入する、何かに駆り立てられたような日々を行っている。

大きな社会的変化の色を反映した音楽の数々

ヴェトナム戦争は史上初のサウンドトラックを伴った戦争だとしばしば言われる。クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの「Fortunate Son」、バッファロー・スプリングフィールドの「For What It’s Worth」、マーヴィン・ゲイの「What’s Going on」等、それを題材とした楽曲は枚挙に暇がない。

Creedence Clearwater Revival - Fortunate Son


直接戦争を題材にとっていない作品であっても、60年台後半から70年台初頭にかけての音楽には、ある種こうした情勢が無意識レベルで“フリ“として効いている程に感じる。これまでのジャズの秩序を破壊し、混沌とした電気音楽の轟音に舵を切ったマイルス・デイヴィス。サイケデリック・ムーブメントに属さず、現実逃避の如く田園風景を描写したキンクスなど。人間の生活全般に影響を与えるレベルの社会的変化は、時代全体の色彩を決定づけるのだ。

現在、そしてアフターコロナの音楽はどうなる?

現在、自粛生活を強いられているミュージシャンの多くは、各自音楽制作に打ち込んでいることであろう。他者との交わりが極端に制限された状況の中、内省的で、密室的な、そしてしっかりと丁寧に時間を掛けられた作品が、世界的なレベルで発表されるはずだ。

そして、音楽内容のベクトルは「陰」の方向に向かうと予想する。音楽が持つ性格は、当時の社会的背景に寄り添って「陰陽」のどちらかに振れることがある。先程挙げたヴェトナム戦争下の60年台後半から70年台初頭は「陰」。ジェネレーションXの代弁者カート・コバーン率いる90年台オルタナシーンも「陰」。第2次世界大戦が収束し、パックス・アメリカーナのもと高度な消費社会に浮かれた50年台は「陽」。もちろん全ての作品を概括的にくくることはできないが、全体のトーンとしての話だ。

未曾有の不景気苦しむ音楽業界。現在アーティストに大切に温められている未発表の作品群は、もしかしたら予算があまりかからない方法でレコーディングされるかもしれない。なんなら、現在宅録環境で作り上げたデモ音源が、完成バージョンにそのまま、あるいは部分的に採用されるケースも予想できる。キュッと身のしまった、こぢんまりとした密度の高い音楽。そんな作品が多く発表されるのではないだろうか。

以上が私の予想する、コロナウイルスが伴うサウンドトラックの属性である。多くの人に記憶される傑作群が生まれることを願っている。

Edited by Aiko Iijima

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