演奏の「遊び」を楽しむヴルフペック 「Cory Wong」徹底考察

ところで、ひと月前に『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』を観ました。MCUなどでもよく見られるものですが、チームが機能している戦闘シーンってあるじゃないですか。自分の持ち味を生かしつつお互いにフォローしあって敵と戦うというようなアクションシーンです。こういうシーンを観ると無条件に泣いてしまいます。「Cory Wong」を演奏しているヴルフペックもチームが機能しているので聴いていると涙しそうになります。

現在はコロナ禍を受けてライブを開催するのが困難な状況です。私もバンド活動に従事する身ゆえ、出演予定のイベントが中止になったり延期になったりするといった事態を経験しています。ライブハウスやイベント制作に携わる人は本当に大変な思いをしているはずです。さらに、楽しみにしていたライブに行くことができず、モヤモヤしている方も多いことでしょう。こうした日々が続くとやはり鬱々としてきます。

今回、原稿を書くために久しぶりにヴルフペックのライブ盤を聴きました。このところ、音楽を聴いても大して心が動かない日々を送っていましたが、メンバーと観客の熱気に当てられて、「またこういうことができる日が来ないわけがない!」という根拠のない楽天的な気持ちがかすかに湧いてきました。それがたった1%の希望だとしても持っていなければやってられません。私の場合、それをもたらしたのがヴルフペックが表現する躍動そのものといった音楽だったわけですが、みなさんもそれぞれ一人ひとりが、聴けば楽天的な気分になるような音楽とともにあらんことを心から願っております。



鳥居真道


1987年生まれ。「トリプルファイヤー」のギタリストで、バンドの多くの楽曲で作曲を手がける。バンドでの活動に加え、他アーティストのレコーディングやライブへの参加および楽曲提供、リミックス、選曲/DJ、音楽メディアへの寄稿、トークイベントへの出演も。Twitter : @mushitoka / @TRIPLE_FIRE

◾️バックナンバー

Vol.1「クルアンビンは米が美味しい定食屋!? トリプルファイヤー鳥居真道が語り尽くすリズムの妙」
Vol.2「高速道路のジャンクションのような構造、鳥居真道がファンクの金字塔を解き明かす」
Vol.3「細野晴臣「CHOO-CHOOガタゴト」はおっちゃんのリズム前哨戦? 鳥居真道が徹底分析」
Vol.4「ファンクはプレーヤー間のスリリングなやり取り? ヴルフペックを鳥居真道が解き明かす」
Vol.5「Jingo「Fever」のキモ気持ち良いリズムの仕組みを、鳥居真道が徹底解剖」
Vol.6「ファンクとは異なる、句読点のないアフロ・ビートの躍動感? 鳥居真道が徹底解剖」
Vol.7「鳥居真道の徹底考察、官能性を再定義したデヴィッド・T・ウォーカーのセンシュアルなギター
Vol.8 「ハネるリズムとは? カーペンターズの名曲を鳥居真道が徹底解剖
Vol.9「1960年代のアメリカン・ポップスのリズムに微かなラテンの残り香、鳥居真道が徹底研究」
Vol.10「リズムが元来有する躍動感を表現する"ちんまりグルーヴ" 鳥居真道が徹底考察」

トリプルファイヤー公式tumblr

http://triplefirefirefire.tumblr.com

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