「本当のロックスター、本当のバンドって何?」を追求―このアルバム、最初は間口が広くて聴きやすいと思っていたのが、繰り返し聴いていくうちにさらなる深さに気づいていくんですよ。本当に凝ったアルバムですよね。山中 めちゃめちゃうれしいですね。
―フレーズ、音色、楽曲の世界観、アルバムとしてのストーリー、何ひとつとして気を抜いてない。山中 そうですね。ひとつでも欠けたらこの世界観は伝わらないんじゃないかという恐怖感がめっちゃあったので、一瞬も気を抜かなかったし、聴覚的、視覚的、コンセプト的に今も気を抜けない状態が続いてます。
―レコーディングが終わってもまだ。山中 ここからこのアルバムをより伝えるためにプロモーションをしていこうと思っているし、アートワークもかなり重要だし、そういう意味ではまだ気が抜けないですね。
―今回、そこまで出し切れた要因はなんですか。山中 今までと違って、自分が生きている理由とか、伝えなきゃいけない使命を明確に感じたことが一番でかくて。だから、アイデアを出すにしてもほわっとしたものが何ひとつとしてなかったんですよ。次のMVはこれ、衣装はこれ、ジャケットはこれ、っていうふうにすごく明確だったし、サウンド面に関しても違うものは違うってすぐわかったというか。
山中拓也(Vo, Gt)(Photo by Hirohisa Nakano)―ライブバンドとはこうあるべき、という考え方すら飛び越えた印象なんですけど、そういう感じ方って正しいですか。山中 あ、正しいですね。音源もライブも生き様を見てもらうものだと思ってるし、音源に対してどういうメッセージが込められているかがロックバンドには問われていると思ってるから、「サウンドが今っぽくていいよね」っていうのはすごく薄っぺらいし、何がコンセプトで何を伝えたいのか、みんなに何を感じてほしいのかが明確に見えていないと俺は1ミリもいい音楽だと思わないんです。今回のアルバムでは「本当のロックスター、本当のバンドって何?」っていうところをすごく追求していて。最近の日本だとそういう存在があまり思い浮かばなかったんですよね。
でも海外に目を向けると、先人が残してきた過去の遺産を受け継いで、それを自分の生き様で表現するロックスターがいる。日本だと表現に制限がかかったり、環境的にそういう存在を生み出せない状況になっている部分も間違いなくあって。俺はそういう制限を全部ぶっ潰してやろうと思ってるんですよ。なので、サウンド的にはロックバンドから離れたように聴こえるかもしれないですけど、精神的にはすごくロックバンドに戻った感覚が強いです。