コロナ禍でもマリファナは「生活必需品」、米国で売り上げ急増

米サンフランシスコの合法大麻販売店の店員と客(Photo by Jeff Chiu/AP/Shutterstock)

いくつかの州では全ての大麻販売所が営業を続けているが、医療目的に限定している州もある。

3月にコロナウイルスの感染が全国に広がり、自宅待機命令が施行され始めた中、大麻を合法化している全ての州では医療用大麻の販売が食料品店や薬局と並んでパンデミック中でも生活に必要な業務だと見なされ、何らかの形で営業続行を認められた。これをニューヨーク・タイムズ紙は「一部のアメリカ人にとって、大麻がパンや牛乳と同じ生活必需品であることが公認された」と表明した。

・大麻のサンプルを手にするときは手袋をする大麻販売所Apothecariumの支店長、カリ・マンゼロ氏。(写真)

これはマリファナ支持派にとっては大勝利だ。だが今年の国内年間売上高が推定120億ドルという娯楽目的の(または嗜好品としての)大麻販売事業者にとって、統一されていないコロナ禍中の緊急事態宣言や命令はわかりづらく、混乱をきたしている。マサチューセッツ州のチャーリー・ベイカー州知事は、医療用大麻の販売所の営業継続は許可したが、娯楽目的の大麻販売店には営業停止を命じた。コロラド州では、娯楽目的の大麻販売店の営業は通販で注文した品物の店頭受け取りのみに限定されたが、医療用大麻の販売所は通常通り営業を継続できる。ネバダ州では、嗜好品としての大麻の販売は宅配のみ認められた。州ごとに法律が異なるので、全てを把握するのは難しい。

医療用大麻は広く受け入れられるようになったものの、一部の販売者は医療用と娯楽目的の区別に異を唱えている。使用目的が違うだけでどの大麻製品も元は同じ植物であるため、区別するのは実際難しい。ハイになるためにハッパを吸う人もいれば、処方薬として頼りにしている人もいる。だがその他大勢の人にとって、使う理由はその中間のどこかだ。

嗜好品としての使用を合法化している11の州では、21歳以上なら誰でも娯楽目的で大麻を購入できる。だが医療用大麻(MMJ)の法律がある33の州では、医師から大麻を処方される基準にかなり差異がある。デラウェア州のように自閉症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療にMMJの使用を認めている州もあれば、ニューヨーク州やニュージャージー州など、大麻使用が認められる疾患をかなり限定しているところもある。14の州では、特に子供の発作性疾患の治療でのカンナビジオール(CBD)の効力が認められているものの、大麻に含まれる向精神性成分テトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が制限されている。全国での大麻合法化を呼びかける非営利団体NORMLはウェブサイトを頻繁に更新し、最新情報を掲載している。

多くの人々が医療用大麻を娯楽用大麻市場で購入していることを踏まえると、差別化はさらに難しい、と全米大麻業界団体の広報部長モーガン・フォックス氏は言う。「患者登録の費用が高過ぎたり、州が定める症状や疾患に当てはまらなかったり――あるいは、医療用大麻許可証の更新を忘れていたのかもしれません」とフォックス氏。「大勢の人々が、薬の入手に嗜好品の販売制度を利用しています」

フォックス氏はさらに、パンデミック中に消費者が合法大麻を入手できなければ、違法市場で購入せざるを得なくなるという懸念もある、と言う。「検査されていない規格外の製品は、それ自体も入手経路も安全ではない可能性があります」 認可を受けた大麻販売店で購入する方が消費者にとっては安全だ――州の法律によって、1回の使用量及びTHC、CBD、残留農薬量、カビ菌、ウドンコ病菌、その他不純物などの検出量を正確に表示することが義務付けられているからだ。

Translated by Akiko Kato

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