トランプのコロナ定例会見から考える放送ジャーナリズム「ライブ感より大切なもの」

ホワイトハウスの記者会見室で報道陣に応じるトランプ米大統領。2020年4月7日(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

トランプ米政権では新型コロナウイルスに関する定例会見をプライムタイムにTVで生中継している。だが、多くのアメリカ人が不愉快な思いをしている。

NBCニュースの元幹部、マーク・ルカシェヴィツ氏もその1人。そして、ネットワークやケーブルテレビ各局が未だトランプ大統領の記者会見をそのまま放映し続けている理由を尋ねるにも適任の人物だ。

ルカシェヴィツ氏は放送ジャーナリスト歴40年の大ベテラン。2000年から2017年までNBCニュースの幹部として、生中継や緊急速報――選挙や大統領候補討論会、大統領就任式など――のオンエアを担当した。マイケル・ジャクソンの訃報からウサマ・ビンラディンの暗殺まで、普段の番組編成のどこに重大速報を生で差し込むかなど、あらゆる重要な決定に関わってきた。2016年の大統領選挙の際は、ドナルド・トランプ候補の選挙活動を生放送でどこまで取り上げるべきか、NBCニュースのスタッフと共に現場で頭を悩ませたことも多々あった。このときトランプ陣営はタダで50億ドル分以上の放映時間を得たとも言われている。

ルカシェヴィツ氏は2018年にNBCを退社し、ホフストラ大学ローレンスハーバート・情報通信大学院の院長に就任した。今はジャーナリズムの教育者として、また1人の視聴者として目を光らせている。

トランプ大統領の新型コロナ会見の生中継を見ているうちに、ルカシェヴィツ氏は我慢の限界に達した。彼はコロンビア・ジャーナリズム・レビュー誌(CJR)に記事を寄稿し、報道番組に関わる元同僚らにささやかな要望を出した。「真実を語っている、ということを生放送の大前提にしようではないか」とルカシェヴィツ氏。「肩書が何であれ、嘘や誤魔化しを繰り返す人間は、二度と生放送に出演させるべきではない」

ルカシェヴィツ氏はローリングストーン誌の取材に応じ、CJRへの寄稿記事や報道番組の現場にいた頃について語ってくれた。トランプ大統領の新型コロナ関連の記者会見は今日の報道番組について何を物語っているのか? なぜTVネットワークは未だにケリーアン・コンウェイ氏(アメリカ合衆国大統領顧問)やスティーヴン・ミラー氏(アメリカ合衆国大統領上級顧問)のようなペテン師を出演させているのか? 事実の追及が仕事の報道番組は自らのルーツに立ち戻ることはできるのか? 同氏に伺った。

・米ラスベガス市長、経済再開の根拠は「市民全員が無症状の保菌者だから」(動画)

Translated by Akiko Kato

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