トム・ミッシュの新境地に学ぶ、「共作」の醍醐味と広がる可能性

左からトム・ミッシュ、ユセフ・デイズ(Courtesy of Caroline International)


ユセフ・デイズとは何者?

ー今更ですけど、ユセフ・デイズってどんな人なんですか。

柳樂:彼はもともと、自分の兄弟たちと一緒にユナイテッド・ヴァイブレーションというハイブリッドなジャズバンドをやってたんだよね。音的にはアフロビート、ラテン、インド音楽などを吸収したスピリチュアルジャズみたいな感じ。それと並行して、鍵盤奏者兼プロデューサーのカマール・ウィリアムスと一緒に、ユセフ・カマールというユニットでも活動していて。こちらではブロークンビーツやディープハウス、UKガラージなどイギリス独自のクラブミュージックを、ダンスフロアでの機能性も意識しながらファンキーな生演奏に置き換えていた。

ユセフ・カマールは2016年に発表した『Black Focus』が大ヒットして。新世代UKジャズ、もしくはサウス・ロンドンのシーンが注目されるきっかけとなったマスターピースとされている。改めて聴くと、『What Kinda Music』にも通じるところが多いので、この機会に日本でも再発見されるといいね。今はどちらも活動停止しているけど、ユナイテッド・ヴァイブレーションもユセフ・カマールもUKのカルチャーを反映したサウンドって感じ。





ー2017年にキング・クルールの取材をしたとき、ロンドンのシーンについて質問したら「ユセフ・カマールは素晴らしいね。特にユセフ・デイズは他に類を見ないドラマーだと思う」と言ってました。

柳樂:それだけ地元では尊敬されてるんだよね。ユセフ・デイズはその後、単独で活動しながら、いろんなセッション音源を発表していて。そこには日本でも人気があるビートメイカー/鍵盤奏者のアルファ・ミストや、ピノ・パラディーノ(ネオソウルを代表するベーシスト)の息子で、『What Kinda Music』にも参加しているロッコ・パラディーノなどが参加しているんだけど、ダニー・ハサウェイのライブ盤みたいなソウル系のセッション感覚と、クラブ・ミュージックの文脈が混ざったような感じで、その音源と『What Kinda Music』も近い感じがする。

アルファ・ミストはトムともコラボしているけど、トムはその手のセッションにはそこまで出入りしてなかったはずで。そう考えると今回のアルバムは、これまでベッドルームを主戦場にしてきたトムが、変化を求めてセッションの世界に飛び込んだ作品という言い方もできそう。



ーユセフの演奏はどんな感じなんですか?

柳樂:ここまで説明した出自が、ユセフの特徴をそのまま物語ってる感じ。ジャズだけに固執せず、ハウス的な4つ打ちやミニマルなファンクビートも叩くし、アフリカのリズムを取り入れたトライバルな演奏もお手の物。「ドラムンベースのような、テンポの速いリズムを叩くのが好き」と言いつつ、「スローテンポで心地よいグルーヴを出せることが、トップ・ドラマーの証だと思っている」とも語っているように、意識も高いしプレイスタイルは柔軟だね。


『What Kinda Music』収録曲「Lift Off」のライブ映像。曲後半のユセフのプレイが凄まじい。

ーそんなユセフと一緒に作ったアルバムが、結果的にダークな作風になったのも興味深い。

柳樂:トムは「ずっとダークな作品を作ってみたかったけど、これまでは『トム・ミッシュのサウンド』を築くことに専念してきた。だから、今回のアルバムは違うことを試す絶好の機会だったんだ。あとは、ユセフの存在がそういう要素を引き出してくれた」と説明しているね。実際、ユセフのカラーが作品全体に反映されているのは間違いない。

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