東芝EMIからワーナーへ ユーミンら時代を彩ったアーティストを近藤雅信が語る



田家:続いては5曲目。2007年5月に発売の鬼束ちひろさんで「MAGICAL WORLD」。シングル『everyhome』のカップリングです。この曲を選ばれた理由は?

近藤:単純に大好きな曲ですね。

田家:これはメーカーがユニバーサル・ミュージックですね。

近藤:会社がユニバーサル・ミュージックに変わってから色々なアーティストと仕事させていただきましたが、鬼束ちひろちゃんは特に印象に残る一人で。このアルバム『LAS VEGAS』は僕もどっぷりスタジオに入って、ディレクションした作品なので。

田家:4年10カ月ぶりの作品でしたね。

近藤:すごく意志の強いアルバムですね、この前に移籍してシングルを1枚出したんですけど彼女のコンディションが悪くて雲隠れしていた時期なんです。僕はレーベルヘッドとして関わったんですけど、復活しようっていう時期に僕がダイレクトにやろうと思ってコンタクト取って始めたんですね。マンツーマンで励ましたりしながら10数曲作って。彼女の場合は、最初のプロデューサーが、僕が東芝時代に一緒に仕事していた土屋くんっていう人で。制作スタイルが、デモの時点でそれぞれの曲の歌詞を完全に作るんです、2番3番まで。10数曲持ってくる時点でデモ(歌詞)が全部完成していた。これをどういう形にしようかなという時に、この叙情感は小林武史さんしかないな、と思って。彼女にも訊いてみたら「いいですね!」って始まって完成した作品なので、とても思い出深いですね。

田家:小林武史さんがプロデュースしている話が耳に入った時に、小林さんがやりたいって言ったのか、もしくは鬼束さんが小林さんを指名したのかなと思ったんですけど、近藤さんだった。これまで関わったプロデューサーの中で、小林さんはどういうタイプの方になりますか?

近藤:うーん。前々回くらいにデイヴィット・フォスターみたいな感じって例を出しましたけど、叙情的にならない叙情感っていうのが非常に上手い方ですよね。一見湿っぽいけど湿っぽくないっていうか、その辺はとりわけ上手いなって思いますね。

田家:感情に流されない。

近藤:そうですね、だからすごく動物的なタイプのミュージシャンとは合うんだろうなと思っていて。Mr.Childrenの時も聴いていて思ったんですけど、小林さんってロンドン感があるというかクールな印象がある。血の濃いアーティストとはすごく合うんじゃないかなと思いますね。

田家:それでは改めて、鬼束ちひろさんの2007年の曲で「MAGICAL WORLD」。このピアノは小林さんっていうことですね。 来週は岡村靖幸さんのアルバム『操』の話を伺うんですが、鬼束さんは岡村さんを神だと思っていたと。

近藤:うんうん。当時岡村くんも並行してやっていたし、ちひろちゃんからもその話を聞いていたので、『BARFOUT!』っていう雑誌で表紙と対談を二人でやりましたね。でも彼女は、コンサートには来ない人なので、岡村くんのライブは見た事ないんです。でもすごく好きって言っていましたね。

田家:“鬼束靖幸”とか“岡村ちひろ”でコラボしたいって言っていましたもんね。

近藤:タイミングがあればね、いいですよね。すごい人とやるのが僕は好きなので(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

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