東芝EMIからワーナーへ ユーミンら時代を彩ったアーティストを近藤雅信が語る



田家:この振り幅ですよ。近藤さんが選ばれた4曲目、坂本龍一さんで「energy flow」。1999年5月のマキシシングル『ウラBTTB』に収録の曲ですね。第一三共のCMソングで、シングルチャート2週連続1位だった。インストゥルメンタルの曲がチャート1位はこの曲が史上初めてだったという曲であります。

近藤:僕が関わったシングルで最も売れたのがこの曲なんですよ。これは当時180万枚くらい売れていますから。

田家:10週間連続でトップ10に入っていたんですよね。

近藤:僕はそんなにヒットシングルが多いタイプじゃないですからね。

田家:スタンダードは多いですよね。

近藤:そうなんですよー(笑)。一番売れたシングルですね。

田家:『BTTB』は移籍第一弾で、移籍の橋渡しをしたのはどなただったんですか?

近藤:移籍が実現したのは、当時の事務所の社長だった岡部(良夫)さんとの会話からですね。

田家:近藤さんと岡部さんが?

近藤:ええ、僕もとってもやりたいと思っていましたし。

田家:それは誘ったに近い?

近藤:そうですね、強引にお願いした感じですね。アルファ時代から敬愛している方ですし、『BTTB』という作品を作れたのは、その後の作品(「energy Flow」)に繋がっていきましたね。当時、マネージャーの方と、ちょっとした茶飲み話の時に、「次はどんなアルバムがいいですか?」って訊いたんですよ。そしたらその方が「坂本のファンは坂本のピアノが好きな人が多いから、ピアノの教則本のようなレコードが良いと思う」って言ったんですよ。そこで「まさにそうだな!」って思って。僕はそういう時にかなり直感的に反応するので、そこから始まったのが『BTTB』ですね。

田家:バック・トゥ・ザ・ベーシック。それでは改めて、坂本龍一さんで「energy flow」。

田家:何がそこまでのヒットにつながったと思ってらっしゃいますか?

近藤:…全く分かりません。すごく良い曲だなと思いますけけど。どういう風に売れていくのか見える作品と見えない作品がありますけど、「energy flow」が180万枚行くっていうのを分かる人がいるんでしょうか?っていう。

田家:結果から聴くと、癒し系のメロディだとか、坂本さんの最もポピュラーな面が出たんではないかっていう分析はできるんでしょうけど、本人はこの時どう思われていたんでしょう? その話はされました?

近藤:不思議だなって感じだと思いますよ。ずっと一緒にいたんですけど、オリコン一位でしたとか報告もしていましたし、本人も喜んでいたと思います。教授も僕も不思議だねっていう感じでした。嬉しいけど不思議っていう。

田家:坂本さんにとっては、この曲はそんなにハードルが高い曲ではないんでしょうか?

近藤:なんていうんでしょう。自然とできたメロディですし細工も何もないですよね。そこが逆に良かったと思います。

Rolling Stone Japan 編集部

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