大型イベント、夏以降に再開することはできるのか?

いままでライブ音楽業界は、可能な限り時間を稼いでアーティストやプロモーターに大損害を与える「中止」という手段を避ける、という新型コロナウイルス対応を行なってきた。イベントを延期することで、プロモーターは数百万ドル規模の消費者へのチケット払い戻しを即座に実行せずに済むのだ(ニューヨーク・タイムズ紙が報じたある見積もりによると、アメリカの消費者がチケット代に支払った金額は10億ドル)。

さらに、米大手チケット販売会社チケットマスターは、新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえてチケットの払い戻しポリシーを消費者にとってより不利なものに変更した、と批評家に告発されて以来、音楽ファンの怒りを買っている(同社はこのような告発を否定し、延期となった4000件以上のスポーツイベントとコンサートの払い戻しをすでに承認している、という内容の声明文を発表した)。米現地時間4月16日、ニューヨーク・タイムズ紙は、ニューヨーク州のジェームス・スコウフィス上院議員が同州のレティシア・ジェームズ司法長官にチケットマスターの親会社である大手イベントプロモーター会社ライブ・ネイション・エンターテイメントの捜査開始を依頼したと報じたものの、スコウフィス上院議員のスタッフは「調査中」とだけコメントし、捜査については認めなかった(米最大手5社のフェスティバルプロモーターはコメントを拒否、あるいは判断プロセスについてコメントすることを控えた)。

複数の政府関係者もコンサートの再開には悲観的だ。カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、年末までは同州においていかなる形態の大規模集会も実施できない、とイベント再開への不信感を何度も声に出してきた。4月初頭、知事は8〜9月には米プロフットボールNFLが再開できるだろうというトランプ大統領の発言を激しく非難し、ワクチンが開発されない限り、大規模集会が開催される可能性は極めて低いと語った。ワクチン開発は、最低でも1年後と言われている。ロサンゼルスのエリック・ガーセッティ市長もニューサム知事と同じ考えを表明した。ロサンゼルス・タイムズ紙が入手した内部メールによると、最低1年は同市における大規模集会は容認できないとガーセッティ市長は複数の高官に語っている。「近い将来、私たちが何千人規模で集まることはとても想像できません。年内は、そのような集会はできない、と覚悟するべきだと思います」と市長はCNNに語った。

コーチェラは、秋の日程を維持しているもののイベントのなかには相次ぐ批判によって中止を決断したものもある。多くのアーティスト同様、トム・ヨークも4月15日にツアースケジュールの変更を発表した。ニューオーリンズ州のラトヤ・カントル市長の圧力により、ニューオーリンンズ・ジャズ・フェスの主催者は、4月23日〜26日と4月30日〜5月3日の2週末にかけて予定していた全イベントを2021年まで中止した。

だからと言って、完全に可能性が断たれたわけではない、とコロンビア大学公衆衛生大学院で疫病学を教えるステファン・モース教授は言う。今後数カ月にわたって自宅でのより正確なPCR検査の実施が幅広く可能になる、あるいは予想よりも早くワクチンが開発されれば、きちんとした計画にもとづく集会は実現可能だと教授は語った。その一方、教授はこうしたシナリオが実現する可能性の低さを指摘し、イベント再開は私たちが考えるよりもずっと先になるだろうと述べた。

「押し進めようという(フェス主催者の)努力は賢明ですが、現実的には難しいでしょう——今年の夏には、選択を迫られます。でも私個人としては、いまはチケットは買いません」とモース教授は言う。

Translated by Shoko Natori

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