メタリカのラーズ・ウルリッヒが選ぶ、最強のメタル/ハードロック・アルバム15作

アリス・イン・チェインズ『Dirt』(1992年)


俺はアリス・イン・チェインズのことを、1990年の夏に出た彼らのデビューアルバムで知った。当時俺たちはロスで『ブラック・アルバム』を制作中で、やつらとはバーやらクラブやらでしゅっちゅう会ってた。若くて気さくで、ユーモアのセンスもあったし、ちょっと変わってたけどマジでいいやつらだった。シャツの下に長袖の下着を着るセンスには首を傾げたけど、彼らのネルシャツの着こなし方は斬新でクールだった。そして彼らの音楽はとてつもなくヘヴィで、アティテュードも満点だった。

それから2年後くらいに出た『ダート』は、ものすごくダークでディープなレコードだった。当時の俺たちはドラッグはそんなにはやってなくて、仲間たちとつるんでがっつり酒を飲むことで満足してた。ドラッグカルチャーは俺たちにとって、決して身近なものではなかったんだよ。俺はそういうのにどっぷり浸かってたやつらとは交流がなかったから、このレコードで歌われていることについても最初はあまり共感できなかったし、遠回しなドラッグへの言及についても理解してなかった。でもやつらとの付き合いが深まり、このレコードの魅力が理解できるようになって初めて、その歌詞の重みに気づいたんだ。

マジでとてつもなくディープでダークなアルバムだと思う。「ルースター」の素晴らしさは、俺が今更説明するまでもないだろう。あれがジェリーの父親についての曲だってことを、当時の俺は知らなかった。「レイン・ホエン・アイ・ダイ」「ダム・ザット・リヴァー」なんかは凄まじくヘヴィだし、短い曲の出来も文句なしだ。正真正銘の傑作で、92年に俺が一番よく聴いたアルバムのひとつであることは間違いない。





ブラック・サバス『Sabotage』(1975年)


ブラック・サバスのファンの大半は『パラノイド』か『マスター・オブ・リアリティ』がお気に入りだってことはよく知ってる。でも俺は、「ホール・イン・ザ・スカイ」と「悪魔のしるし」のワンツーパンチこそが彼らの真骨頂だと思ってる。よりディープな曲群も相当にヤバい。「誇大妄想狂」は、まるでヘヴィメタルの教科書のような曲だ。レコードでいうA面は、おそらくブラック・サバス史上最高の20分だろう。極めつけは「悪魔のしるし」だ。シンプルなリフや、チャグチャグっていうあのダウンピッキング、あれぞ80年代や90年代のハードロックやメタルの原点さ。

俺が初めて買ったサバスのレコードは、これの前作にあたる『血まみれの安息日』だった。発売直後の1973年のクリスマスにゲットしたんだけど、マジでゾクゾクした。とりわけ怖いのが、「血まみれの安息日」の後半だ。「どこに逃げるつもりだ? / 俺たちが他に何をしたっていうんだ? / 血まみれの安息日 / 万策尽き果てた」背筋が凍りつく恐ろしさだ。『サボタージュ』は他の作品に比べてアップテンポな曲が多いのが、俺がこのアルバムをお気に入りに挙げる理由のひとつだ。彼らのサウンドは作品ごとに洗練されていくけど、個人的には初期のシンプルさに一番魅力を感じる。そういう意味でも、『サボタージュ』は彼らの最高傑作だと思う。

●オジー・オズボーンが選ぶ、究極のメタル/ハードロック・アルバム10作


Translated by Masaaki Yoshida

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