川谷絵音が語る、ザ・ストロークスとバンド音楽の可能性「ギターはこれから来ると思う」

この状況下にロックンロールが目を覚ますか

―途中で「またギターが弾きたくなった」という話がありましたが、Rolling Stone Japanの最新号では「いまこそ楽器を」という特集をやっていて。休日課長とサンダーキャットの対談も載ってたりするわけですけど、絵音くんは楽器の可能性、生演奏の可能性について、どんな風に考えていますか?

川谷:ギターはこれから来ると思いますね。今コロナですごいことになってて、全世界平等に、すべての人が負のオーラを感じてる。こんなこと今までなかったと思うんですけど、これを打破する音楽って打ち込みじゃないなって思うんですよ。まあ、実際はみんなリモートワークになってて、さらに打ち込みが増える可能性も十分あるけど。でもやっぱりギターで、安直かもしれないけど、ロックスターみたいな人がコードひとつで世界を変えるみたいな、そういうことってありうると思うんです。ここで一回リセットされて、エンタメの構造も全部変わっていくと思うんで、その空気感をいち早く切り取って音楽にするには、自然とギターになるっていうか。実際、俺もひさしぶりにギターを弾いたら、自然にゆら帝の「すべるバー」を弾いてて、自分もこういうマインドになってるんだなって。

―社会的にも、大きな時代の転換点を迎えていることは間違いないでしょうからね。

川谷:時代を変える……というか、時代はもう変わっちゃうから、そこでどういう音楽が出てくるかって、すごく重要だと思うんです。Spotifyで新曲を聴いても、「またこういうトラックか」ってなるのに飽きたというか。ニューリリースのページから曲を聴いてもちょっと違うなと思うものが多いというか。もちろんかっこいい音楽は山程あるんですけど、今の自分は確実に違うものを欲していて、ストロークスがこのタイミングで出るっていうのは意味があるなって。

―途中の「ゾーン」みたいな話で言うと、ストロークスの新作は社会的な意味でもゾーンに入ってることを感じさせる作品ですよね。今回のコロナで一番ヤバいことになってるのがニューヨークで、そんな中ニューヨークを代表するバンドが、ニューヨークを代表する画家であるバスキアの作品をジャケットに据えて新作を発表する。「ABNORMAL」というワードにしても、音楽的な意味でも、社会の危機という意味でも取れるタイトルだと思うし、誤解を恐れずに言えば、やはり「持ってる」バンドだなって。

川谷:めちゃくちゃ「持ってる」バンドだと思いますね。

―世界の音楽シーンの変化という意味でも、何かの予兆のような作品になるかもしれない。

川谷:「変わる」というよりは「戻る」のかなって。オアシスが再結成するしないみたいな話もあって、それが実現したらさらにその動きが加速すると思うんですけど、今の若い人にとってはチルな音楽の方が普通で、ロックンロールに戻ると、それが逆に新しいっていうことになると思うから。

―ストロークスの登場もまさにそうだったわけですよね。90年代にダンスミュージックが台頭して、チルっていう意味だと、90年代終わりの方にはエレクトロニカも出てきて、そういう中でシンプルなロックンロールを、ちゃんと2000年代の形で提示したことが新しかったし、だからこそ誰もが熱狂したわけで。そう考えると、やはり歴史は繰り返すというか。

川谷:20年前にやったことをもう一回アップデートしてやるというか、そういう感じもありますよね。

―ちなみに、他にも今気になってるバンドっていますか?

川谷:ポストパンクで言うと、さっき挙げたスクイッドもそうだし、Snapped Anklesってバンドもかっこよかったです。最初の話に戻りますけど、俺が大学生のときも音楽友達周りでポストパンクが流行ってて……もはや「ポストパンクってどこからどこまでなのか?」みたいな話もありますけど(笑)、でもそれから時を経て、今改めてすごく新鮮で、やっぱり時間って必要だなって。フォールズとかも、一時期アンビエントな方に行ってたけど、Amazon Primeでドキュメンタリーを見て、やっぱり今の時代に必要なロックバンドだなって思いました。俺も一時期はロック的な歪んだギターがクールじゃないなって思ってたんですけど、今だったらちょっといなたいチョーキングとかも使い方によっては全然アリだなって思うし、そういう中で、自分なりの答えを出したいと思ってます。






ザ・ストロークス『ザ・ニュー・アブノーマル』ジャケット写真.jpg
ザ・ストロークス
『ザ・ニュー・アブノーマル』
国内盤CD:2020年4月10日(金)発売
歌詞・対訳・解説付き
配信リンク:https://lnk.to/TheStrokesTheNewAbnormal


FUJI ROCK FESTIVAL ’20
日程:2020年8月21日(金)~8月23日(日)
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
時間:9:00 開場/11:00 開演/23:00 終演予定
※ザ・ストロークスは8月22日(土)に出演
https://www.fujirockfestival.com


ゲスの極み乙女。
『ストリーミング、CD、レコード』
2020年5月1日より全曲配信開始
配信リンク:https://gesunokiwamiotome.lnk.to/johPu

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