川谷絵音が語る、ザ・ストロークスとバンド音楽の可能性「ギターはこれから来ると思う」

井上陽水の曲からストロークスの音が聴こえる?

―一度話題をストロークスの話から絵音くん自身に移すと、「ストリーミングの時代においてバンドがどんなアプローチをするべきか?」みたいな話は2010年代後半ずっと言われてきたことですが、ゲスの新作『ストリーミング、CD、レコード』においては、どんなことを意識しましたか?

川谷:最近は特に、海外のサウンドに憧れてそのまま参照する人が多いじゃないですか? そこに日本語の歌が乗って、「日本っぽい」みたいな。そうはしたくなかったので、洋楽そのもののサウンドになり過ぎないようなトラックアレンジにはしました。あとはストロークスの取材で言うのは何ですけど、とにかくギターを弾かないっていう(笑)。


『ストリーミング、CD、レコード』に収録される「人生の針」

―まあ、そこはバンドの編成が全然違うしね(笑)。

川谷:チルってる場合じゃないけど、でもただロックをやってる場合でもなかったっていうか。さっきも言ったように、歪んだギターを鳴らすと、どうしてもプレイリストでしょぼくなっちゃうっていう問題がある。いい音にするには、ミドルに音を集めないで、わりとスカスカにする必要があって、その一番の有効打が、ギターを弾かないってこと。もちろん、弾くところでは弾いてるけど、極力削って、その代わりに弦や管を入れて、あとは極力4つ打ちを使わず、リズム隊のアレンジを緻密に作って、打ち込みも多めにして、今までとは違う感じにできたかなって。で、作り終わって、ストロークス聴いたら「これからはギターじゃん」って(笑)。

―ははは(笑)。

川谷:ポストパンクの流れも含めて、ギターがまた来てると思うから、今作ったらまた違うものになると思います。ちょうど昨日、課長と一緒にストロークスを聴いてたんですけど、やっぱり「歪みの質すごくない?」って話になって、ギターを弾きたいなって。



―それで言うと、むしろインディゴですよね。ギターが2本あるバンドなので。

川谷:インディゴは今ちょうど制作をしてて、そっちはそっちでまた全然違う感じっていうか(笑)。もちろん、ギターは弾いてるんですけど、どっちかっていうと、昔の歌謡曲っぽい感じで、楽器のアレンジもモロにそっちに寄ってて。ユーミンさん、達郎さん、井上陽水さんとか。あとは俺フォークって全然聴いてこなかったんですけど、そういうエッセンスも入れたいなって思ってて。

―2月に配信された新曲の「チューリップ」も絵音くんはアコギですよね。

川谷:そうですね。今また3曲作ってて、一曲はフュージョンとかファンクみたいな感じで、ギターもラインで録ってて、あとはめっちゃジャズロックみたいなのと、これからフォークっぽい曲を作りたいなって。あっ、あと陽水さんの昔の曲で、「娘がねじれる時」っていう曲があって、それがめっちゃストロークスっぽくて好きなんですよ(笑)。途中のギターとかめっちゃストロークスで、(誰の曲か)知らないでその部分だけ聴いたら、「これストロークス?」ってなるくらい。ギターとアレンジが高中正義さんで、今度もし誰かに曲提供する機会があったら、叶うなら高中さんにアレンジ頼みたいなと思ってるくらい好きで(笑)。


「娘がねじれる時」は井上陽水の79年作『スニーカーダンサー』に収録

―なるほど。フュージョン視点でストロークスを見たら、また違った見え方ができそう。

川谷:今って「どうやったら海外で日本の音楽が聴かれるか」みたいな話もあるけど、結局日本が感じられないと、誰も聴いてくれないと思うんです。洋楽っぽくやっても、日本人が聴く分にはオシャレって思うかもしれないけど、海外の人からすれば、わざわざ聴く必要ないって思われちゃうと思うから、そうはなりたくないなって。で、誰を参考にするかってなると、達郎さん、ユーミンさん、陽水さんを聴けば、そこにはヒントがめちゃくちゃある。昨日もずっと陽水さんを聴いてたんですけど、「これ今でいえばストロークスだな」とか「これテクノじゃん」とかいろいろあって、そういうのを自分流に消化して出したら、今の日本にはないものが作れるんじゃないかと思ってるんですよね。

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