銃乱射事件の教訓はどこへ、アメリカで急増する銃所有者に密着

使い方も法律も知らない人の手に銃が渡る恐怖

いつもの射撃場内の店で、ジョンは妻と一緒に長蛇の列に並び――「ソーシャル・ディスタンシングという点では、あまりよろしくないでしょうが」――残り少ない在庫の中から1丁の拳銃を選んだ。それから1時間足らずで、彼は人混みをかき分け、身元調査をクリアし、銃を購入した。「こんなに大勢の人が一度に店に集まって、どんな銃でも買おうとする光景は異様でしたね」とジョン。「明らかに貯金箱の小銭で銃を買っていた男性もいましたよ」

・ほぼ空になった銃販売店の陳列棚

客の多くは初めて銃を購入する人々で、火器の扱い方もよく知らないのではないか、とジョンは感じている。「不安ですね」と彼は言う。「店に入って1時間もしないうちに拳銃を手にして店を出られるなんておかしいですよ。普段からこんなことが出来る必要なんて完全にないし、根本的に危険です。安全訓練も受けず、火器を使ったこともない人が銃を買えるなんて、どうかしている」

全米で封鎖が施行される前、どこの銃器販売店にも人が押し寄せ、品切れが続出した。店主たちは特に、銃購入に関する州の法律を知らない客の対応に追われた。ニュージャージー州グラスボロにあるBob’s Little Sport Shopの副社長、ウェイン・ヴァイデン氏によると、店員たちは何度も、銃を購入してもその日自宅に持ち帰ることは出来ない、と客に説明しなければならなかったという(ニュージャージー州では、銃の所有希望者はまず火器購入者識別カードに申請しなければならない。申請処理には30日以上かかることもある)。「この2週間で『識別カードって何ですか?』『拳銃許可証って?』という質問を、1年分以上聞かされました」

同様にテキサス州オースティンのCentral Texas Gun Worksでも、インターネットでの購入希望者や身元調査の手続きに関してまで、客からの質問が殺到した。「最初の頃は1時間に100件も電話がかかって来て、しまいには混み過ぎてこちらから電話をかけることも出来ない状態でした」と言うのは、オーナーのマイケル・カーギル氏。公共での拳銃の携帯も認められているテキサス州の銃の法律について客に説明することも多い。

Translated by Akiko Kato

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