銃乱射事件の教訓はどこへ、アメリカで急増する銃所有者に密着

銃購入は精神的支え

ウイルス本来の危険は生物学的なものだが、最近銃器や弾薬を購入した多くの人々は、パンデミックの波及効果によって社会規範が崩れるのではないか、と恐れている。新たに失業者となった人々が抱える経済的窮状、政府の不十分かつ遅すぎる対応、日用品不足などが相まって、何としても自分の身は自分で守らねば、というアメリカ人の本能が呼び起こされたのだ。事実、2016年にハーバード大学とノースイースタン大学がアメリカの銃所有者を対象に行ったアンケートによると、銃器購入の主な理由は護身、自衛だった。「多くの人々にとって、(銃は)気持ちをコントロールするものなんでしょうね」とオフナーさんも言う。「大人にとっての、温かい毛布のような存在なのかもしれません」

だが相次ぐ銃乱射事件で絶えず心を痛めているアメリカで、新たに200万丁の武器が出回り、その一部は今まで銃を所有したこともない人の手に渡ると、どんな長期的影響が出るのだろうか?

3月23日、インディアナ州のエリック・ホルコム知事が自宅待機命令を発令すると、インディアナポリス在住のジョン・Kさんは銃を購入しようと決意した。オフナーさん同様、彼も銃器の扱いには慣れており、射撃場ではレンタルの銃を使っていたが、自ら所有したことは一度もなかった。新型コロナウイルスの流行以前にも射撃の練習用に拳銃の購入を考えていたが、実行に移すことはなかった。だが、連邦政府のパンデミックへの「無責任な」対応を見た40代前半のジョンは、万が一必要に迫られたときに家族――妻と10代の子供たち――を守る術が欲しいと思った。「万が一何かあった場合に備えて、準備しておいた方が良いと考えるのはおかしなことではありません」と彼は言う。「社会が崩壊するとは思いませんが、もしそうなったときに家族を守る術がなかったら、自分なら相当後悔すると思います」

Translated by Akiko Kato

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