不況に伴うメンタルへの影響 誰もが助けを求められる社会の必要性

ちょっと古いデータになりますが、2005年のOECD(経済開発協力機構)の調査によると、「ほとんど、もしくはまったく友人や同僚もしくはほかの人々と時間を過ごさない人」の割合は、日本の男性では約17%(女性は14%)で、21カ国平均の3倍近くになり、調査21カ国の中ではダントツのトップでした。つまり、それほど社会的に孤立している、孤立させられている人たちがいるということです。「絆」や「一致団結」という言葉がよく使われますが、実態として社会はそうではない側面があるのです。社会的な孤立は自殺の要因にもなります。これには「助けて」とか「つらい」と言いにくい社会も影響していると思います。(連載第2回参照)

「助けて」「つらい」と言わずに頑張りすぎて苦しくなってしまい、メンタルにも問題を生じてしまう「過剰適応」にも気を付けなければなりません。80年代の伝説的バンドで、2020年に「Jagatara2020」として再始動したJAGATARAに「もうがまんできない」という曲があります。この曲では、この曲名とは裏腹に「ちょっとのひずみならがまん次第でなんとかやれる」「心の持ちようさ」と歌われていて、過剰適応してなんとかやっているけれど、本当は「もうがまんできない」状態の人間をとても良く表されています。これから私たちは、もっとそれぞれが自分の思考や感情を大切にして、社会全体を誰しもが「助けて」「つらい」と言えるようにしていくべきなのだと思います。

こころの健康相談統一ダイヤル
0570-064-556 

厚生労働省:電話相談窓口
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_tel.html

【参照】

ゲートキーパーについて
東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/tokyokaigi/gatekeeper.html

OECD Social isolation
http://www.oecd.org/sdd/37964677.pdf



<書籍情報>




手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。

Official HP
https://teshimamasahiko.com/


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